『いのちを救う先端技術』(久保田 博南著)

いのちを救う先端技術 (PHP新書 540) 756円 259p 09.02.08


 視点の時期を半世紀前に設定してみよう。 そこから、現在の技術を眺めるようにするれば、「最新の医療機器」を容易に理解してもらえるのではないか。


Opinion
 普段私たちは、血圧や体温といった数値には、絶対の信頼があるように感じている。 しかし、必ずしもそうとは限らない。 つまり、血圧や体温は、日常的に親しみがあるにも関わらず、まだまだ研究の余地が残っており、一般にはあまり知られていないことも多いようだ。 例えば、体温が体の左右で温度が微妙に違い、体温はからだ全体を見渡した場合にその分布がさまざまな様相を呈すことがあげられる。 さらに、血圧測定にいたっては、非侵襲でかつ連続測定、使いやすく、しかも精度が保養されているというような方式が実現可能ならば、ノーベル賞ものだ、とまで言われている。 先端技術を使った医療機器の紹介と、その基となった技術・歴史に触れることができる新書らしい一冊。 


About author
久保田 博南
群馬大学工学部電気工学科卒
日本光電興業(株)、コントロンインスツルメンツ(株)を経て、
現在、ケイ・アンド・ケイ・ジャパン(株)代表取締役
ISO委員、医療機器開発コンサルタントサイエンスライター
著書 『電気システムとしての人体』など 


【目次】
Contents
はじめに
【序章】 
《生命の原点を追って》
バイタルサインはロックの曲名?/生命兆候を探る技術/人体相手のエンジニアリング
【01 「生きてる証」へのアプローチ】 
《人命探査装置など》
生存者を探索する技術/生と死の判定/進むバイタルサインの検知技術
【02 心電図を”ケータイ”で見る】 
《心電計・心電図モニタ》
デンキナマズの話/生物電気現象の種明かし/カエルの足と人の心臓/興奮すると収縮する/心電図は心臓のリズム表現/正常と異常の区別/「心電図」を読み取る機器/ケータイでも確認できる
《ホルタ心電図》
38キロを背負う/長時間心電図の父/重さが3000分の1になった
【03 心臓のカラクリを解く】
《心磁計》
人体内には磁界もある/心臓の立体解析が可能
《血流計》
心臓の「性能」をつかまえるには/血流を測る知恵/血圧と血流のシュミレーション
《血圧計》
血圧とは/血圧計と言う装置の本質/世紀をまたぐ発見だが・・・/血圧計は人間の認識能力が頼り/なぜ振動法なのか/高性能血圧計への道のり
【04 心臓を元気付ける】
《AED》
機上での緊急アナウンス/「救急蘇生」の新しい考え方/人を生き返らせる技?/ガルバーニのカエル再出演/時代の異端児ここにあり/重要なのは心電図による確認/東京マラソンでのAEDの活躍
《心臓ペースメーカ》
はじめての人体実験/アメリカ中心のペースメーカ/ペーシング技術の進化/ICDの導入へ
【05 決悦中の酸素が読める】
《パルスオキシメータ》
「出産」というドラマの舞台裏/未熟児の挑戦/血液中に酸素は十分か/ヘモグロビンの酸素運搬/血中の酸素をどうやって測るか/パルスオキシメータの存在意義
炭酸ガスモニタ》
人体は炭酸ガスに敏感/血液中の炭酸ガスを測る
【06 意識レベルが測れるか】
《SASスクリーニング装置》
ディケンズは見抜いていた/「睡眠時無呼吸症候群」とは/どうしたらSASが診断できるか
脳波計・脳波モニタ》
脳の活性度を示す証/麻酔の深さがわかる/病気診断への寄与となるか
《脳磁計》
脳波に対する脳磁図/多チャンネルSQUIDの威力
《痛み測定装置》
「他人の痛み」がわかるか
【07 常時発熱体としての人体】
《体温計・体温モニタ》
日本記録が出た夏/人間も冬眠できる?/温度から見た人体/ガリレオの温度計からはじまった/なぜ体温が大切なのか/体温計も進化している/まだ旬の体温測定技術/体の部位による体温差
【08 人は動く】
《筋電計など》
”動人”のためのエネルギー源/筋電計からわかること/筋弛緩モニタという装置/原理を逆用して治療器に/胃も電気で収縮/網膜や眼球
《生活習慣レコーダ》
直接的に動きをとらえる/生活動体の記録/活動量の記録
【09 体内を覗く】
《X線装置》
何が世界のサプライズだったのか/X線技術の光と影と/小さくなったX線装置/X線CTの最新技術
内視鏡
胃の中を覗くことへの執念/胃カメラ発明の発端/細くなったファイバースコープ/観察しながら治療する/カプセル内視鏡の出現
MRI
原子の歳差運動を利用/短くなったMRI
【終章 400歳の医療機器】
古典機器と三大神器と/歴史的・世界的に見た技術/人類に約に立つ技術を
おわりに/参考文献