幕末下級武士のリストラ戦記 安藤優一郎

幕末下級武士のリストラ戦記 (文春新書) 767円 200p 20.01.09
ある、筆まめな下級武士が書き残した自分史を主題に据えて、「ペリー来航」、「桜田門外の変」や「大政奉還」が起きた激動の時代を見ていきます。 主人公の山本政恒が、けして、勝ち馬に乗ったとは言えない境遇を生き抜いたことから、勝者や当時の権力者が綴った歴史とは違った色があります。 本人が器用貧乏を白状するほどで、商いにもうまく順応するなど、それ程暗いストーリーにはなっていないのですが、今と違い、兄弟や子どもに先立たれることで残念な思いをすることも少なからずあったようです。 偶然ですが、所縁の地の近くに滞在中に読みました。 日本の歴史モノも面白いですね。 私が日本史に親近感を持っているのは、学校や塾で習った日本史の先生が悉く面白い方だったからかもしれません。 一番好きな時代劇は「暴れん坊将軍」です。


安藤優一郎
歴史家、文学博士(早稲田大学
東京理科大学生涯学習センター、
JR東日本、大人の休日倶楽部「趣味の会」の講師を勤める
著書 『大名屋敷の謎』など


はじめに −時代の敗者の思い
01 将軍の影武者
御徒の質素な暮らし
政恒の生い立ち/御徒の株は500両/影武者用の黒羽織/貸家業で家計を支える/5年前の古古米が常食
政恒、側近に召抱え
6歳から手習い/寛永寺に奉公に出る/魚は年2回/安静の大地震に遭う/本家の婿養子となる/血判の作法
影武者の職務
江戸城内で寝ずの番/手抜きの給食/将軍御成りの警備/つらい御能拝見/必死の水泳稽古/新入りの通過儀礼
02 最後の御徒
刀から鉄砲
江戸城炎上/要人テロの頻発/講武所に入る/歩兵になる
御徒組、消滅す
日興への出張/宿屋を強請る悪習/将軍家茂の客死/妙な仕来り/宿屋の仇討ち
大坂城に脱出
大政奉還の将軍に同行/薩摩の蔵屋敷を襲撃/紀州に敗走
03 静岡藩士・山本政恒の誕生
江戸開城
江戸城に戻る/上野戦争の前夜/寛永寺焼亡/非業の死/徒弟を匿う
静岡への移住
過酷な徳川家処分/無禄移住の現実/帰商の結末/天皇を拝す/家財を整理/浜松に向かう
浜松での試練
フランス式の調練/一気の鎮圧に向かう/畑仕事を習う
04 政府官吏への道
廃藩置県の大波
獄吏に採用/囚人護送で失態/内職の日々/熊谷からの朗報
江戸への郷愁
前橋で再々出発/家族のため新居を購入/子どもに先立たれる/幕臣たちのOB会
多趣味な毎日
筆まめで器用貧乏/長男の徴兵逃れに奔走/自炊も苦にならず/酒の失敗談/釣りとキノコ狩り
05 幕臣の意地を貫く
新たなチャレンジ
群馬県吏を非職/苦難は続く/50歳の決意/小間物屋を回転
自分史を書こう
帝国博物館に就職/御徒町に戻る/幕臣の矜持
恒一代記の執筆
出版宣言/前編の完成/真実のみ記す/政恒、大往生す
おわりに −歴史の闇に光るもの
山本政恒関係年表