巨大銀行の消滅 鈴木恒男

巨大銀行の消滅―長銀「最後の頭取」10年目の証言 1995円 343p 29.01.09
・出資であれば、たとえ数年にわたって無配であっても、企業化するまで待てるが、融資では契約されたとおりの利息が支払われないと、それが、不良債権になる。 〜転換点 1985年
・他の銀行が先行しており、レベルの低い案件しか残っていなかった。 〜現場をあおった融資本部
・貸し出しシェアこそがすべての取引の基準であり、それを引き上げることは営業マンの「勲章」だった。 〜根強い「規模」へのこだわり
・「債権者である銀行は取引先の株を持つべきでない」という教訓も過去のものとなり、長銀でも70年代から徐々に株式保有が増加していた。 〜株式持合いと含み益の増加
・責任を伴わない分権型組織では、各部門が自戒していても、結果的には、野放しの放任状態になる。 〜分権型組織の欠陥
三菱銀行東京銀行の合併の実現は、外為専門銀行だけではなく、日本における専門金融機関の消滅の始まりであると同時に、長信銀にとっても合併が重要な選択肢として登場したことを示すものでもあった。 〜大蔵省vs興銀
護送船団方式を前提にしていた仲間内の資金融通システムで起きた戦後初のデフォルトに、まさに金融資本市場は凍りつき、金融機関同士が疑心暗鬼に陥ってしまった。 〜わずか10億円で凍りついた金融市場
・通常、日本の証券会社であれば、親元の銀行の信用問題が生じているような時には、たとえ、それが実需に基づく注文であったとしても他の証券会社に持ち込むように顧客を誘導する。 しかし、欧米の証券会社では注文を受けた営業マンの実績として扱われ、自らの報酬に直結するとあって、親子関係は斟酌されない。 〜襲いかかるグローバルマネー


鈴木恒男
東北大学経済学部卒
日本長期信用銀行入行
大坂支店営業第三部長、企画部企画室長、審査部長を経て、
取締役事業推進部長
その後、営業企画部長、常務取締役、副頭取、頭取代行、頭取
長銀の国有化に伴い、解任
現在、会社顧問


序章 「長銀無罪」への長き道のり
取り戻した社会との「絆」/封印されてきた長銀破綻の理由
01 バブル期の長銀に何が起きていたか
長期貸し出しの構造的な現象/なぜグループノンバンクは急膨張したか/ガバナンスの空白時代
02 バブル前史 苦闘の末に
失われた長銀の制度的基盤/融資構造の激変に戸惑う審査/「脱長信銀」への試行錯誤/業態変換への挑戦と挫折/金融制度改革と長信銀の運命/当局も市場の本質を見誤る
03 試行錯誤の不良債権処理
バブル崩壊−ついに山が動いた/EIE破綻と思いがけない逆襲/二信組破綻で受けた社会的ダメージ
04 長期化したグループノンバンクの再建
バブル崩壊の衝撃と初期対応の誤り/ノンバンク処理の基準となった住専問題/次々に行き詰るノンバンク/金融行政の転換とビックバン
05 激流に飲み込まれた長銀
急激に変化した外部環境/ハードランディング路線への急旋回/負け戦でも「旗」を守り抜く
06 長銀破綻と米欧の金融危機
逆転無罪が意味するもの/日本型市場経済への道を求めて
あとがき