動的平衡 福岡伸一

つまり私たちは、直感が導きやすい誤謬をみなおすために、あるいは直感が把握しづらい現象へイマジネーションを届かせるためにこそ、勉強を続けるべきなのである。(p.60)
動的平衡とは、シェーンハイマーが、流転の中の淀みという生命の特異的ありように対してつけた言葉。本書では、生命にちなんだエッセイが集められている。生命現象は絶え間の無い分子の交換の上に成立し、合成と分解との動的な平衡状態のバランス上に成り立つ「効果」であり、時間の関数。にもかかわらず、人間は人間を機械的に捉えがち。臓器をパーツと見なすことを受け入れない人であっても、サプリメントでビタミンを補う事にはあまり抵抗が無い。むしろ、飲まなければならないという心的抑圧を感じる傾向にすらあることを指摘する。

たしかに、本来食べるべきものをしっかり食べておけば問題は無いはずだけれど、これはとても難しい。特に、たくさんの品目を取ることを継続的に達成するのはとても難しい。家事のみに専念できない環境(例えば一人暮らし)ではこの困難は増すだろう。これを補うのが家庭的飲食店や学生であれば学食。しかし、感想としてはまだ少し値段が高い。食べる量なので、当然個人差があるが、ワンコインで収まるぐらいがいいのでは。日本は途上国一つ養えるぐらいの食料廃棄をしている。しかし、供給の仕方が偏っている気がする。もっと、ハンバーグや牛丼とは違った、名前のない「煮物」や「和え物」といった漠然としたふつうのおかずをたくさん食べられる店が増えて欲しい。本書にもあるように食べ物には頓着するするべき。しかし、もっと生活のコストは下げられるはず。安心な気がするから、と少し値の張る国産を選ぶ消費者は多いけれど、現代人の食べ物に対する内的参照価格は案外低いのでは。いつもより高いところで食べる時には(勿論料理もだけれど)店の雰囲気や一緒に食べる人にも左右される体験的部分を合算した値段が釣り合うかを考える。だから、一人で、ササッと済ませる晩ご飯などは基準となる価格がグッと下がるというのが実感。牛肉高いので、よくラム肉のお世話になります(いま、値段下がっているそうです)。

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福岡 伸一
京都大学
ロックフェラー大学およびハーバード大学医学部博士研究員
京都大学助教授を経て、青山学院大学理工学部教授
分子生物学専攻
著書 『生物と無生物のあいだ』など


「青い薔薇」 ーはしがきにかえて
プロローグ ー生命現象とは何か
01 脳にかけられた「バイアス」 ー人はなぜ「錯誤」するのか
02 汝とは「汝の食べた物」である ー「消化」とは情報の解体
03 ダイエットの科学 ー分子生物学が示す「太らない食べ方」
04 その食品を食べますか? ー部分しか見ない者達の危険
05 生命は時計仕掛けか? ーES細胞の不思議
06 ヒトと病原体の戦い ーイタチごっこは終わらない
07 ミトコンドリア・ミステリー ー母系だけで継承されるエネルギー産出の源
08 生命は分子の「淀み」 ーシェーンハイマーは何を示唆したか
あとがき