『グーグルに勝つ 広告モデル』  [★★★☆☆]

おはようございます。
今日は、『グーグルに勝つ 広告モデル』 (岡本一郎著) を紹介したいと思います。
グーグルに勝つ広告モデル (光文社新書) 756円
広告論というよりも、メディア論として有益な一冊でした。


About Author
 岡本一郎
 Royal Collage of Liberal Arts 卒
 慶応大学 文学部 修士課程終了
 現在 メディアデザイン研究所 主宰
 

Contents

 はじめに
 1章 マスメディアの本質は 「注目=アテンション」 の卸売業者
 2章 アテンションはゼロサムゲームから脱却できるか?
 3章 マスメディアの競合としてのインターネットメディア分析
 4章 4マスメディア vs インターネット
 5章 テレビ vs インターネット
 6章 オンデマンドポイントキャスト事業の提言
 7章 ターゲットメディアとしてのラジオ確立
 8章 情報のコモディティ商戦から 新聞は抜け出せるか
 9章 ネットとの差別化に特化する雑誌
10章 合従連衡によってプレイや−の数を減らす
11章 なぜ、それでもマスメディアが必要なのか
12章 コンテンツ論
13章 マーケッターに求められる パラダイムシフト


Intelligence
 グーグルの価値
   グーグルは社会に生まれた 新しい価値を象徴しています。
   それは、コンテンツそのものよりも
   それを整理する時間を削減してくれることに価値を見出す社会的価値観です。
 ヤフーとグーグルの違い
   ヤフーはアテンション (注目)の卸売りをしており、
   グーグルはインタレスト(興味)の卸売りをしている。
   この違いが何を意味するかというと、
   グーグルの方が、消費者が購買を決定するまでのステップが少ない
   ということです。
   広告効果に関しては、「AIDMA」という考え方があります。
     (近年AISASというのも提示されていますね)
   Attension → Interest → Desire → Memory → Action
   の頭文字をとって「AIDMA」なのですが、
   ごらんのように、Interset は、Attension よりも 一つ後のステップになります。
   ですから、広告効果がより高いと考えられ、この特徴を持つことで、
   グーグルは企業に対して 広告単価を高く設定することが出来ますね。
 顧客1人あたりの単価を高める
   著者の提言は、
   「ターゲット効率を高めることで 顧客1人あたりの単価を上げる」
   という考えに基づいています。
   現在、企業は広告費に莫大な金額を投じていますが
   それを認知する消費者の数もあまりに大きいため
   1人あたりの広告単価は非常に安くなっています。
   また 多くの消費者に認知されているとはいえ、カテゴリーされていないので
   広告のほとんどは無駄になっています。
 インターネットのマーケティングにおける活用法 
   現存のメディアには、
   それぞれに購買層 (視聴者) や、 必要とされる シチュエーションが存在します。
   しかし、インターネットにおいてはさらに顕著で
   プロフィールによりセグメントされたターゲットに対して、
   メディアのポジショニングを重ねることができますね。
   既存のメディアと比べ、
   より緊密で 情緒的・感覚的なブランドコミュニケーションが可能なメディアとして
   認識することが出来ます。
   違う視点から見ると、プロモーションの段階で使えそうなメディアがあったからと言って
   そこに押し込んでみたのでは、 消費者の文脈・思いは無視されていることになります。
   広告を行う場合 どの媒体にも言えることですが、
   広告計画は、
   キャンペーン前の認知の把握、シュミレーション抜きには 成り立ちませんね。
 旧メディアの代表としての新聞の衰退
   理由1 同種の情報を低価格で大量提供するプレイヤーの登場
   理由2 常識へのニーズの低下
   新聞に書いてあることは、
   「最低限知っておくべきこと」という無言のプレッシャー に対して
   鈍くなった ということですね。
 旧メディアのマーケティングにおける活用法
   著者は、
   「人々が問題意識として
   共有できるよう発信する機能を果たすことが出来ているのは、新聞とテレビだけだ」
   と主張されています。ですから、彼らが生き残るための戦略が必要になります。
   オンデマンドポイントキャストがその一つとして提示されています。
   専門性の高さ、編集機能により ターゲッティングがしやすくなります。
   そして、
   「ほとんどの人にとって、過去のコンテンツは 新しいコンテンツ」
   だということに着目すれば、コストを抑えることも可能です。
   著者は、まずやってみることが必要だという 至極全うな提言をされています。
 ○プロトタイプを使用したアプローチ
   1. 分析に特化する (課金を好まないユーザにはプロフィールを詳しく書いてもらう)
   2. 地域に密着する (マイクロエリア化する)
   3. プロトタイプで実験する


Recommmend ★★★☆☆
  なかなか、私と折り合いのつかない部分がちらほらありますが
  メディア論としては、おもしろい一冊なのではないかなと思います。
  メディアを利用したプロモーションに興味のある方は ご一読ください。
  この本をお読みになって、広告に関して興味を持っていただいたら
  この本に出てくる指摘点がすでに議論されている本がありますので
    (私が言うのもおこがましいですが)
  次のステップとして、 ぜひ、お読みになっていただきたいと思います。
  
  例えば、
  「企業は情報テクノクラートとしての一面と、
  顧客と等身大の目線を獲得する窓を手に入れた」 ということに関しては
  次の段階として、企業の根幹商品をユーザの要求に摺り合わせすぎると、
  イノベーションが起きにくくなるステップが現れます。
  この問題は C.クリステンセンという方が「イノベーションのジレンマ」
  の中で述べられています。
  「イノベーションの解」 「明日は誰のものか」 
  と続刊も出ていますので 楽しんでいただければと思います。 (近日紹介予定)
  
  また、「広告が効かなくなりつつある」 ということに関しては、
  「広告はすでに効いていない」 と、実感としてあるのではないでしょうか。
  今日は、土曜日ですので 少し実感が湧きにくいかもしれませんが
  私たちは普段 通勤・通学の過程で、大量の広告物を目にしています。
  しかしそのほとんどは、見えていても 見えていませんね。 
    (これが嫌だという方は、『発見力養成講座』をどうぞ)
  それを考えた上での、広告活動ならまだしも 多分にして計画性のないですね。
  また、あまりに莫大な金額を使っていると思われます。
  
  この 「人気芸能人を登用し、大量に流す」 という20世紀的アプローチと、
  通俗的な 「DAGMER」 の理解への疑問提起として、
   「統合広告論」 (水野由多加著) の中で議論されています。
  「DAGMER」 というのは、広告効果の目標管理体系 といったものですね。
  通常 「商品銘柄の知名・理解・好意・購買志向」 として理解されていますが、
  この本で著者はこれだけでは不十分だと以下の点を指摘しています。
   1. カテゴリーニーズが前提となっている
   2. 受け手の能動性が必要
   3. 「AIDMA」 のリアリティに疑問
  すでに、21世紀型のアプローチは可能になっていますので、
  認知・構造の変化が求められていますね。
  IMC効果の議論が一番でしょうか。
  しかし、筆者も認めるように
  ラジオ・新聞などのマス媒体における議論が欠けている部分もあります。
  それは、本日のテーマ本で補完が可能だと思います。

  おもしろい議論だと思いますので、本日の本と合わせて これらの本をお薦めいたします。

  イノベーションのジレンマ 増補改訂版 (Harvard Business School Press) 2100円 イノベーションへの解 利益ある成長に向けて (Harvard business school press) 2100円 明日は誰のものか イノベーションの最終解 (Harvard business school press) 2520円
  統合広告論―実践秩序へのアプローチ 3360円


What's more
 「アメリカでは、小学生の頃からメディアリタラシーの教育があり
  マスメディアに中立的な意見を求めるのをあきらめている」
 という話がありました。 ほんとなんですか?
 『パラダイス鎖国』 (海部美知著)の中で アメリカでは、海外事情に興味を持たない人も多くいる
   (つまり、アメリカもパラダイス鎖国の同輩だ。近日紹介予定。)
 とありましたが、関係があるのでしょうか? それともただ単に 無関心なだけ? 
 詳しい方に伺いたいものです。

 
 このブログを読んでいただいている方の中には、
 「LEON」をお読みになっている方もいらっしゃると思います。
 「LEON」が戦略的に
 「2重の格差の幻想」を戦略的に使っているいる事は、ご存知でしょうか?
 秘密は、今日の本の中に。。。