『インテリジェンス 武器なき戦争』  [★★★★☆]

おはようございます。
今日は、
『インテリジェンス 武器なき戦争』 (手嶋龍一、佐藤優著)
を紹介します。
インテリジェンス 武器なき戦争 (幻冬舎新書) 777円

NHK特派員だった手嶋氏と、元外交官の佐藤優氏の対談で
本書は構成されています。
対談とはいえ、生易しいものではなく 手嶋氏が
「このような危険な対談は、これ一度で打ち止めにしたく思います」と言うほどの、
鬩ぎあいがあり、ドキドキハラハラする一冊でした。


About author

 手嶋龍一
 慶應義塾大学 経済学部 卒
 NHKワシントン特派員
 ボン支局長、ワシントン支局長を経て NHKから独立
 慶応義塾大学 大学院 システムデザインマネジメント研究センター 教授
 著書 『ウルトラ・ダラー』など
 HP外交ジャーナリスト・作家 手嶋龍一オフィシャルサイト
 
 佐藤優
 同志社大学 神学部 卒
 同志社大学 大学院 神学科 卒
 外務省に入省し 在ロシア日本国大使館勤務
 現在起訴休職中
 著書 『国家の罠』 『自壊する帝国』 など


Contennts

 まえがき
 序章  インテリジェンス・オフィサーの誕生
 第1章 インテリジェンス大国の条件
 第2章 ニッポン・インテリジェンス その三大事件
 第3章 日本は外交大国たりえるか
 第4章 ニッポン・インテリジェンス大国への道
 あとがき


Information
 ○武器なき戦争における武器
   外交は武器を使わない戦争といわれますが、
   「インテリジェンス」はそうした戦いに不可欠な武器になり、政治指導者の羅針盤となりえます。
   このとき扱う情報は、Information ではなくIntelligence です。
   手に入れたInformationは 利用しうる Intelligenceに昇華させる必要があります。
 ○インテリジェンスの技
   インテリジェンスや情報力というのは、自分の弱いところを出来るだけ隠して、
   実力以上に強く見せる技法のようですね。
 ○インテリジェンスプレイヤーのプロ
   1. 約束を絶対に守る
   2. できない事は約束しない
   3. 必要ないこと、これ以上踏み込まない方が良いことは あえて聞かない
 ○ネオコンの特徴
   ネオコンと呼ばれる人々は、 
   民主党のリベラル派だったが、その安全保障・外交政策に落胆して保守派に移った人々が主です。
   P.ウォルフィッツ前国防副長官がその代表格で
   R.パール外交諮問会議元議長のイデオローグを持ち、
   第1次湾岸戦争時からバグダット侵攻を主張していました。
   また、彼らはトロツキストグループで 学生時代から世界革命の思想を持っていました。
   世界自由民主主義革命という普遍的な一つの理念によって、
   世界を統一していこう という革命家なのだそうです。
 ○2つのインテリジェンス
   1つは、カウンター・インテリジェンスですね。これをやる人のバックに捜査権があり、
   いざというときに公権力を行使して 力によって封じ込めることが出来ます。
   2つめは、ポジティブ・インテリジェンスです。様々な状況をある意味一人で打破するしかない
   日本の公安警察外事警察は、世界最高水準に近いカウンター・インテリジェンスをほこり
   G8の平均以上の力量があるようですね。   
   しかし、この二つのインテリジェンス・プレイヤーが同時に動くと軋轢が生じますので
   為政者にバランス感覚が求められます。
   まだまだ インテリジェンスプレイヤーが不足している現状ではありますが、
   日本には実現するだけの潜在的インテリジェンス能力があると指摘されています。
 ○日米同盟に関して
   日米間の空洞化を放っておくべきでない とされています。
   佐藤氏は、「将来の日米同盟離脱に備えよ」という議論が出ること自体理解できない
   国益にかなっていないし、大国アメリカを考えずにどうやって舵取りをするのか と指摘されています。
   安全保障の分野では、日米同盟の強化が必要だとされてはいますが 同時に
   インテリジェンスに関しては、アメリカに依存しない独自の能力を高める必要があるともされています。


Recommend ★★★★☆
  うがった見方が、
  上手ければ おもしろく、下手であれば “ただ そういう見かたをする人だ”と思われてお終い。
  もちろん著者は後者ですね。わざわざトンデモを作らなくても、現実は こんなにも面白いことを隠しています。
  「お前は何を隠しているんだ?」と問いかけるインテリジェンスというゲーム。
  その世界における文化の片鱗に本書で ぜひ触れていただきたいですね。


What's more
  「悪魔の弁護人」という役割が存在するそうです。
  トップの出した答申を「これは失敗する」と言い続ける役割です。
  『戦争経済』 (J,スティグリッツ、L.ビルムズ著) という本で、
  著者は 過ちである戦争を起こさないための抑止力として18の提言を行っていますが、
  ぜひ「悪魔の弁護人」も取り入れていただきたいですね。 (近日紹介予定)
  世界を不幸にするアメリカの戦争経済  イラク戦費3兆ドルの衝撃 1785円