思考するカンパニー

『思考するカンパニー』(熊野 英介著)


思考するカンパニー―欲望の大量生産から利他的モデルへ 1365円 194p 02.04.08


Contents

はじめに −有機的カンパニーを創るために

【1 価値を生み出す冒険】 ―事業の意義とは何か
本当の価値とは何だろうか?/見つからない未来/限界の反作用/競争から逃げた鮒?/無から有への価値創造/善悪を増幅する装置

【2 今の世界の始まり】 −なぜ地球は危機的状況なのか

労働が資本になった日/機械文明が精神文明を凌駕した/物質文明の代償/大量消費の最大幸福/暴走する欲望/6億と59億の危機的なバランス/大量生産システムから循環型システムへ

【3 人類に突きつけられた「孤独」】 −弱いからこそ利他的になれる

生産される「欲望」/不幸は欲望を触媒にする/自由という名の不自由/さまよえる知識/関係性を本能にした人間/孤独では生きていけない人間/信頼動機を科学する

【4 「利他」という価値を事業化するために】 −生活スタイルという文化の大きな役割

信頼欲求は商品化できる/不確実性をマネジメントする/利他的モデルに先行投資するため/特殊解の連続性から法則性を体系化する/コストパフォーマンスからバリューパフォーマンスへ/ITによって1000万人株主総会も可能な時代に/環境問題は経済問題に優先する/企業を超えた企業/利他的モデルこそが世の中を変える

【5 日本の文化が価値を作る新しい時代】 −人の価値の復活を目指す
原初、日本は人種の坩堝だった/融和という政治戦略/破綻の中に美意識を見る/日本文化の本質は自然崇拝/領国経営から始まった「日本型資本主義」/西洋の末っ子、アジアの長男/原価計算が出来ない価値/バリューパフォーマンスとは「匠」の精神である/人の値打ちの復活

【6 持続可能社会をデザインする】 −行動するカンパニー

利他的ニーズを集める実験/地域を再生する「心産業」/森林資源の循環利用/農林業のワーキングホリデー/自然資本と社会関係資本の向上/生存圏の再構築/信頼関係は資本を形成する/精神的相互扶助のシステム構築/関係性をデザインする/同じ思いの人が集まるカンパニー/「性弱説」から見た利他的欲求/暗闇へ飛び出す勇気を

おわりに −「再-循環」構築という使命



Information
バリューパフォーマンス
多くのマーケティング戦略は、これまでいわゆる計画的陳腐化という概念に支配されてきた。新製品を投入する段階で従来品をいかに時代遅れにするかという手法である。
そうして新製品も計画的に古いものになり、廃棄の対象となるのである。
今ある、大領生産・大量消費社会では「コストパフォーマンス」が重視されている。だが、利他的モデルで生み出していくべき品物やサービスは、物やサービス独自の価値を高める「バリューパフォーマンス」を追求したものになるはずだ。しかし工業社会ではその価値作りの部分は無視され、「物づくり」にフォーカスがあたってしまう。
工業化を推進するなか、本来「物づくり」だった日本人の行動が原価計算できる物づくりになってしまった。


性弱説
事業家の私は性善説ではなく「性弱説」を取る。人間は弱いから嘘もつくし、見栄も張る。しかし一方で自己犠牲の精神や「他人のために」という利己的な欲求も持っている。
その利他的な欲求に根付いた経済モデルを作ること、それを持って新産業革命を起こしたいのだ。
「機械を買えば資産になるが、人を採用すればコストになる」こういった考え方をいつまで是とするのか。人的資産を評価する手法がないのはおかしくないだろか。


事業家のメッセージ
事業家というものは事業で社会にメッセージを表現するべきであると考える。
事業家のメッセージといいうものは具体性に富み、わかりやすいものでなければならない。


企業の社会的責任(CSR)というものが問われる時代にありますね。
多国籍企業(MNCs)は今や、ちょっとした国家規模になっていますから、その振る舞いは国際関係に大きな影響を与えますね。
MNCsの活動を制限すべきだという意見がある一方で、そのリソース(技術、人材、資金)を国際秩序のために利用すべきだという意見もあります。
日本では、04年に経団連が企業行動憲章の修正を行いましたが、国際的には、アナン元国連事務総長が「グローバル・コンパクト」を提唱しました。
UNHCRやILO、MNCs、NGO、が参加し、その活動内容を毎年報告するというシステムです。
実践的に進化していくものであり、その自発性が評価されるので 企業の参加は公益であり 企業の私益にもなり得ます。
日本企業では、富士メガネの「視援隊」というものがあるのをご存知でしょうか。
社員が難民キャンプをまわって メガネを提供するのですが、受け取った人それぞれに合うようにきちんと調整も行うそうです。
社員が自主的に出向くというのがすごいですね。
松下幸之助氏に「世界一の眼鏡屋さん」と言わしめた創業者の金井武雄氏は、06年に日本人初のUNHCR「ナンセン難民賞」を受賞しました。
たしかに、グローバル・コンパクトへの参加の有無というのは企業を観る上での一つの指標となりうるかもしれません。


About author
熊野 英介
スミエイト興産株式会社(現アミタ株式会社)入社
93年代表取締役社長就任
02年エコ産業創出協議会会長に就任
06年より東北大学で非常勤講師
   
最後まで読んでくれて ありがとうございます。
ピンと来ない部分もありましたが、面白い視点がありましたので紹介しました。