円安バブル崩壊

『円安バブル崩壊』(野口 悠紀雄著)


円安バブル崩壊―金融緩和政策の大失敗 1680円 228p 05.29.08


Contents
はじめに −時局落語 圓高か圓安か。横丁は大騷ぎ
【1 円安バブル頼りだった景気回復】
景気回復は改革ではなく円安で実現した/円安バブル発生と膨張のメカニズム/異常な円安を誰も批判しなかった/不動産価格の上昇も低金利の歪み
【2 サブプライムローン問題が円安バブルを破壊した】
円安バブル崩壊による株価下落/これは二一世紀型の危機か?/サブプライム損失より深刻な日本の対外資産/きわめて困難な今後の金融政策/本当に必要なのは産業構造を変えること/日本型経済を沈滞させる真の原因は戦時体制
【3  「金融立国」は必要だが、可能か?】
イギリスを復活させた金融業/どこかおかしい日本の金融規制/ 「金融立国」に必要なのは人材/大学院は理想のインキュベイター
【4 ただ驚嘆するほかはない「グーグル」】
インターネット時代の「ビッグ・ブラザー」?/世界はグーグルの前にひざまずくか?/情報はグーグルに預けるのがいちばん安全/すべての日本企業を抜いたグーグル
【5 地域間格差の是正はバラまきでなく創意で】
ふるさと納税」にだまされてはいけない/ 「ふるさと納税」は、寄付の崇高な精神を踏みにじる/日本を崩壊に導く法人事業税の改悪/バラまきで経済は活性化しない/地域間格差是正と分権促進は矛盾しない/格差を利用して格差に対処する
【6 年金改革をいかに進めるべきか】
ずさんな記録管理とは別にある年金の根本問題/年金に関する本当の争点は負担と給付の関係/維持できるはずがなかった国民年金制度/制度設計の基本に誤りがあった/楽観的な見通しで年金改革が遅れる/いかにもおかしい民主党の年金改革案/必然性がない税方式への移行/税方式への移行は政治と企業のご都合主義/社会保障目的税増税のためのトリック
【7 政策論議の基本とすべき思考法】
社会を進歩させるのは知的好奇心/政策論議を歪めるマスメディアのバイアス/量的拡大でなく比較優位原則で解決しよう
あとがき/記録帳/索引


今、株式市場が発しているメッセージは、「現在の産業構造では日本は生き延びることが出来ない」ということなのである。


Information
円安バブル崩壊
円安バブルとは、超金融緩和や為替介入によってもたらされ、円キャリー取引など引き起こし、「投機が投機を呼んで異常な円安が進行する」という状態だ。 これによって、輸出産業を中心とする日本企業の収益が増大し、株価が上昇した。 しかし、サブプライムローン問題が顕在化し、円キャリー取引の巻き戻しが生じた。 これによって、円安バブルが崩壊し、企業収益の悪化と下落がもたらされた。 サブプライムローン問題をきっかけとした世界経済の混乱が今後どうなるか確たることは言えないが、日本経済が大きな問題に直面していることは明らかだ。 ここでの本質的な問題は、日本の経済において、企業が世界経済の大きな構造変化に対応していないことだ。


金融インフラ
市場インフラはさまざまな要素からなる。 その中には、ハイテクビルや交通機関などのハードウェア的施設も含まれる。 しかし、重要なのは、ソフト面でのインフラストラクチャーだ。 金融立国のために市場インフラの整備と並んで重要なのは、高度な金融業務を行いうる、人材を育成することだ。 このためにはファイナンス理論と数学の教育が不可欠である。 そして、日本企業が英語を日常的に使いこなせないということは、インドなどへのアウトソーシングをする上で大きな障害になっている。  


遊びはプロキシ
遊びは知性の代理変数である。 ここで言う「遊び」とは、「生存のための合理的な目的に寄与することがないもの」である。 それは、自己目的的な行為であり、定義によってはムダなものだ。 知性は本来的に、無目的な行為を求める。 そういった、知的好奇心の赴くままに開発したものが経済活動を変えるような「イノベーション」となる。 最初からそれが、意図されていたわけではなく、ましてや政府が方向付けをし、研究費を投入して開発したわけではない。


About author
野口 悠紀雄
63年東京大学工学部卒業
64年大蔵省入省
72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得
一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て
05年4月より早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授
専攻はファイナンス理論、日本経済論
著書 『情報の経済理論』 『「超」経済脳で考える』
HP http://www.noguchi.co.jp/

以前紹介した、『ジェネラルパーパステノロジー』との関連が深いですね。  

ジェネラルパーパス・テクノロジー - hasen’s long life (hatena)