日本にノーベル賞が来る理由 伊東乾

日本にノーベル賞が来る理由 (朝日新書)
伊東 乾
朝日新聞出版
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日本にノーベル賞が来るのはなぜか。それは、科学的基盤を持つ世界が「期待」しているから。経済的にも学問的にも成熟している日本が世界の非対称解消に助力してくれることを期待している。非対称とは、人種やジェンダーの問題そして、学びの環境。海外に国内大学の支店を作る、講座を持つ、海外の人に対して学生としてや地位あるポストとして、もっと門戸を開く。こういったことは予算的にも十分可能だと著者は指摘している。
ノーベル賞授与の歴史経過から読み解き、こうした結論に至ったようだ。ノーベル賞の授与は、学問的成果はもちろんの事、加えて政治的なパワーバランスに注意を払って行われており、特に、兵器の能力検証のために被爆国となった日本には細心の注意が支払われているとのこと。

湯川博士への受賞当時、サンフランシスコ講和条約前ということもあり報道に限界があった。そのため「暗い世相に明るい話題」の扱いに終始してしまったそうだ。これは、今でもあまり変わらないかもしれない。それでも、スポットが当たって報道されることには一定の効果があると思う。受賞者が講演を行うこともあるし、はてなを始め、ネット上でも受賞理由となった研究の解説をしてくる方が出てくる。だから、下村博士のご子息が天才ハッカーだ、なんて話も聞ける。では、なぜノーベル賞が「ノーベル賞」で止まってしまって、受賞理由となった研究内容のところまで行かないのだろうか。受賞対象が何十年も前の研究成果であっても、知ることが出来れば新鮮に記憶に残っていそうなものだけれど。新聞や雑誌でも取り上げられるのだから、ただたんに私が時間を割いてこなかったからかもしれない。ただ、授業でこういう話を聞かなかったことが気になる。高校の授業は雑談(脱線)が少なかったのだろうか。例えば、地学の授業で覚えていることなんて、水の中では砂や泥が沈殿するスピードが違うということを確認する実験だけだ。スノーボールアースパンゲアの話も聴いた覚えが無い。地学に限らず学校では一日中寝ていたせいかもしれないけど。パンゲアを始めて知ったのは確か、小学校の国語の教科書だと思う。だから、かなり踏み固められた基礎的な知識だと思っていたのだけれど、『超大陸』を読む限りそうではないみたい。プレートテクトニクスによって大陸の集合離散が複数回行われていたらしい。つまり、パンゲアの前のパンゲアがあったらしい。こういう話が聞けたらもっと授業に積極的に臨んでいたかもしれない。たぶん、先生もこういう話をしようと思えばできたのだろうけれど、履修や授業時間の関係で出来なかったのかもしれない。学校の先生は先生で消化不良があったのだろう。

最近、教育の事に興味がある。理科実験ができる塾を新聞の挟み込み広告で目にしたし、立命館小学校(だったかな)でのパワーポイントを使った授業を始めているという話も聞いた。考える題材には事欠かない。母校以外の学校ではどんな授業をしていたのだろう。先生同士の連携はどうなっているのだろう。先生のFA 制度という話はどうなったのだろう。先生というのは憧れの職業の一つ。もう少し続けて考えていこうと思う。 

超大陸―100億年の地球史
テッド・ニールド
青土社
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伊東 乾
東京大学大学院情報学環准教授
作曲家/指揮者
東京大学理学系大学院物理学専攻博士課程単位取得退学
同総合文化研究科博士課程修了
第一回出光音楽賞ほか受賞
著書『さよなら、サイレント・ネイビー』ほか


はじめに
01 幻の物理学賞と坂田昌一、戸塚洋二
02 ノーベル賞を勘違いした日本人
03 究極のパワーバランス
04 「対称性」でノーベル賞を見る
05 知の好循環は回っているか?
06 問われる「ノーベル賞受賞後」の活動
07 「壁」を越えて・・・世界が日本に期待するもの
あとがき