スパイと公安警察 泉修三

スパイと公安警察-ある公安警部の30年
泉修三
バジリコ
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公安捜査官を勤め上げた著者によるエピソード集。著者は、あまりに過酷な仕事(時に職場)のせいで、とうとう身体を壊すに至る。著者の描く日常の一場面は、まさしく警察24時と言える俗っぽいシーンから一般には知りえないような息詰まるインテリジェンスの世界まで幅広い。立ったままするパチンコや学生活動家といった時代を感じさせる情景、時折混ぜ込まれる「消毒」(尾行を巻こうとすること)や「バンかけ」(職務質問)といった業界用語、そして日にちに及ぶまでの詳しい書き込みによって一気にひきこまれる。

外国人クラブの会員名簿から怪しい人物のピックアップ及びその理由付けを行った著者や、その同僚のインテリジェンスが光るシーンもあった。例えば、ゲシュタルト心理学の「素地と図柄」と言う理論を応用した捜査テクニック。視覚の焦点となっているのが「図柄」であり、その他の視界に入っている部分が「素地」。駅前の景色に加えて修学旅行生やサラリーマンは素地としてインプットされており、その素地に入り込んだ「大通りを見下ろす少女」など特殊な因子が「図柄」としてピカッと浮かび上がるのだそうだ。なかなか真似できそうにない技に舌を巻いた。本書は全国の警察官に向けた、事なかれ主義を嫌う著者からの激励の言葉で終わる。


泉 修三
都立両国高校東京都立大学法学部卒業
警視庁入庁、公安部外事一課、内閣調査室国際部を経て
警視に昇任、同年退職


プロローグ
01 新米巡査
02 地獄の上の警察署
03 連続企業爆破事件
04 イリーガルスパイ
05 籠絡されたCIA女性職員
06 基地班の捜査線上に浮かんだサンキスト
07 北朝鮮工作員に協力する「土台人」
08 機動隊員に変装
09 内閣調査室国際部
10 ソ連スパイとの闘い
11 右翼対策・過激派対策の現場へ
12 国際テロ班
13 協力者工作
14 警部昇任と自律神経失調症
15 恋人
16 公安警部
エピローグ
あとがき