不透明な時代を見抜く「統計思考力」 神永正博

大人たちはあれこれ言いますが、重要なことは「事実」です。冷静に現実を見つめ、感情論を排し、結論を急がずに試行錯誤しながら解決策を見つけること。 (p.002)
本書は、データを扱う上での態度を明快に示してくれる。データ分析や統計手法の重要な部分を「データを見る・読む・利用する」の順に分かりやすく解説し、実際に「若者の読書離れはほんとうか?」「小泉改革は格差を拡大したのか?」「連続する事件や自己に関係があるのか?」という疑問に思った経験があること、議論になっているのを耳にした覚えがあることの検証を試みている。「その無作為は本当に無作為か」「見せかけの循環」といったデータの誤用及びバイアスについても注意を喚起してくれるので、事実だけでなく”議論の共通言語”としてのデータ自体とも冷静に向き合うことができそうだ。

一つ一つの議論を逐一検証するのは実際問題として難しいから、ある程度は報道や調査結果に頼らないといけない。けれど、その導き出された結論も視点が変われば変化しうる(場合によっては作成者も気づかぬうちに間違って導き出されている)ということを頭に入れておくだけでも意味があると思う。「データ図+文章」の記事を見たら、データ図から先にチェックするというのは今日から早速やってみたい。


神永 正博
博士(理学/大阪大学
東北学院大学工学部電機情報工学科准教授
東京理科大学理学部数学科卒業
京都大学大学院理学研究科数学専攻博士課程中退
東京電機大学助手、日立製作所中央研究所研究員を経て現職
著書 『学力低下は錯覚である』など


はじめに
01 基礎編 データを見る
生データを入手する/データを図にする/専門外のデータはこうして読もう
02 中級編 データを読む
基本をおさえるー平均と分散/足したら出てくる正規分布/一を聞いて十を知るー大数の法則/分けて考えるべき分布/因果関係と間違えるなー相関
03 上級編 データを利用する
未来を予測する/思考を錬磨するーオープンコラボレーション/自力で考えることの最大の敵
統計・文献ガイド/あとがき/参考文献