学問のすすめ 福澤諭吉

学問のすすめ 現代語訳 (ちくま新書)
福澤 諭吉
筑摩書房
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およそ世の中の物事は、進歩しないものは必ず退歩する。退歩しないものは、必ず進歩する。(p.068)

まずは、読み書きそろばん、の生活に役立つ学問を端緒とするのがいい。しかし、自分や家族の生活をやり繰りするだけで満足してはいけない。その先に在るのは、社会に貢献しようとする志。自分の生きた証を残し、後世に伝えていかなくてはならない。文明はそうして繰り返されてきた先人からの贈り物であり、感謝の気持ちを持たなければならない。自身の自活を目指す「内への義務」と、皆で協力して社会の自由独立を目指す「外への義務」の2つが「何者にも束縛されない独立」という大義に対しての義務。

学問のすすめ』は、昔、親に読まされた記憶がある。しかし、少し読んだところでやめてしまい、内容も覚えていない。当時は本を読まなかったということもあるけれど、おそらくは書き方が難解だったためだと思われる。斉藤孝氏による現代語訳版の本書を読んで、決して内容が複雑で消化できなかったがために記憶に残っていないのではないということがよくわかった。ひじょうにザックリとした語り口で、読んでいると、気持よく説教をされているような気分になる。在り方や方向付けについての議論であるから、データや論証に基づいたものではないけれど、その代わりに、借り物ではない”ならでは”の良さが在るように感じられた。それが、訳者のいうところの「肉体性を伴っている」という本書の良さとも符合すると思う。

はじめて、こった本は宮部みゆきの『レベル7』。風呂に行くのも忘れて、何時間も読んでいたのが懐かしい。


福澤 諭吉
中津藩士、著述家、教育者、啓蒙思想
「時事新報」の発行人
慶応義塾の創設に尽力
著書『西洋事情』など


はじめに ー今、なぜ現代語訳か?
01 学問には目的がある
02 人間の権理とは何か
03 愛国心のあり方
04 国民の気風が国を作る
05 国をリードする人材とは
06 文明社会と法の精神
07 国民の二つの役割
08 男女間の不合理、親子間の不条理
09 よりレベルの高い学問
10 学問にかかる期待
11 美しいタテマエに潜む害悪
12 品格を高める
13 怨望は最大の悪徳
14 人生設計の技術
15 判断力の鍛え方
16 正しい実行力をつける
17 人望と人付き合い
解説/おわりに