脳の中の身体地図 S.ブレイクスリー/M.ブレイクスリー

脳の中の身体地図―ボディ・マップのおかげで、たいていのことがうまくいくわけ
サンドラ ブレイクスリー マシュー ブレイクスリー
インターシフト
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自己は、肉体の境界で完結するのではなく、他の生物をも含めた周囲の世界へとあふれ出し、融合する。(p.10)

脳の中にはマップがある。それも、いくつも。自分の肉体だけではなく、マップに周りの空間や手に持った道具、乗っている馬までをも結びつけて、融合する。マップは定型化したものではなく、変化する。例えば、ギターの練習。運指の練習をすれば、対応する筋肉群のマップが増大する。練習をしなくなれば、収縮する。さらには、練習を繰り返していくうちに、効率化されて、マップは再収縮する。さらに、名人のように極めんとすれば、求めることが多くなるがために、マップは再び増大を始める。実際の練習だけではなく、イメージトレーニングによっても、運動皮質は(本当に)刺激される。体と脳の関係は互恵的。本書は、ボディマップを中心に据えて、身体化や自己の創出、そこに絡んでくる、道具や文化、思い込み、、、、との関係について解説されている。

脳は文化に寄生するというラマチャンドラの説が紹介されていた。もっと知りたいと思わせるものである。本書が面白いのは、既に解明された脳機能の詳しい説明・充実したコラムはもちろんのこと、もう少しで分かりそうなこと、学者の間で説が分かれていること、も含めて書かれている点だと思う。既に踏み固められた部分だけではなく、今まさに議論されて波打っている部分に触れることができるのは非常に有意義なことで、もっと知りたい、とそそられる。脳の性質をいかに活かすか、という話は面白い。でもやっぱり、脳機能そのものの話の方が鮮やかさを持っているように感じられる。

http://wiredvision.jp/news/200906/2009061623.html


サンドラ・ブレイクスリー
サイエンス・ライター
長年『ニューヨーク・タイムズ』紙に寄稿
神経科学が専門だが、記事のテーマは幅広い。
著書『脳の中の幽霊(共著)』など


マシュー・ブレイクスリー
サイエンス・ライター
サイエンス・ライター一家、ブレイクスリー家の4代目


はじめに ー身体化された脳
01 身体の曼荼羅     どこもかしこもマップ、マップ
02 脳の中の小人     あなたの男性のシンボルが自分で思うほど大きくないわけ
03 ボディ・マップの決闘 減量に成功しても太っていると思うわけ
04 脳も運動中      メンタル・トレーニングが良く効くわけ
05 狂った可塑性     スポーツや音楽の達人がうまくいかなくなるわけ
06 壊れたボディ・マップ 博士が手を下ろしていられなかったわけ
07 身体を包むシャボン玉 オーラが見えたり、幽体離脱したりするわけ
08 サルからサイボーグへ ビデオ・ゲームにはまるわけ
09 鏡よ、鏡       あくびがうつるわけ
10 心と身体が交わる場所 痛みが気分次第で変わるわけ
あとがき ー”私”とは錯覚なのか?
謝辞/用語集/図版クレジット/解説