原発・正力・CIA 有馬哲夫

原発・正力・CIA―機密文書で読む昭和裏面史 (新潮新書)
有馬 哲夫
新潮社
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正力松太郎とはだれか。54年当時の読売新聞の社主であり、日本テレビ放送網株式会社の社長。正力には野望があった。日本中にマイクロ波通信網を結び、さらにアジアへとそのネットワークを拡大しようと考えていた。正力には力があった。マスメディアのトップに君臨し、強力なトップダウンによるコントロールで、世論を揺さぶる事ができた。正力本人の政治家になりたいという願望と、世論への影響力という力が磁場を作り出し、現職政治家やCIAを引き寄せる事になる。それが、日本と原子力のもう一つの物語。

私が物心ついた頃にはすでに発電所と自然環境の議論がおきていた。社会の授業では、火力や風力といったの発電方法のメリット・デメリットを考え、地熱などの新しい発電方法を調べたりした。資源の問題などを省けば、既にエネルギー大国の地位にあったといえる。しかし、戦後から復興し産業発展を遂げるその過程において、エネルギー(電力)が不足したという事実がある。原子力にその活路を見出そうとするグループ、被爆事故により反発、日本が原子力技術を持つ事に躊躇を覚える米国、首相の座を狙う正力。そのくんずほぐれつする様子が本書で描かれている。著者は、米国の機密文書を含む公文書の中から紡ぎ出し、原子力発電の導入という戦後史の一つを、手に取るところにまで引き寄せてくれた。


有馬 哲夫
早稲田大学社会科学部・大学院社会科学研究科教授(メディア論)
早稲田大学第一文学部卒業
東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得
93年ミズーリ大学客員教授
著書『日本テレビとCIA』など


プロローグ 連鎖反応
01 なぜ正力が原子力だったのか
02 政治カードとしての原子力
03 正力とCIAの同床異夢
04 博覧会で世論を変えよ
05 動力炉で総理の椅子を引き寄せろ
06 ついに対決した正力とCIA
07 政界の孤児、テレビに帰る
08 ニュー・メディアとCIA
エピローグ 連鎖の果てに
あとがき/本書のソース/年表