世界経済はこう変わる 小幡績/神谷秀樹

世界経済はこう変わる (光文社新書)
小幡績 神谷秀樹
光文社
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最近は、景気の底打ちが指数として表れて、楽観論が少しずつ出てきているそう。私としては、まだ爆弾が残っているという悲観論に寄っており、また、改めて表面化した産業や政府財政などの日本独自の問題がいよいよというところまで来ていると思っている。本書ではさらに悲観的な意見が述べられていて、特に神谷氏の「10合目のうちまだ2合目」という意見には絶句した。しかし、なにもかも悲観して、もうダメだとは言っていない。神谷氏には人間讃歌があり、ルネサンスによってもう一度皆で社会を描いていこうという呼びかけがある。そして、小幡氏は文化という強力な素養を持つ日本に可能性を見ている。

資本はこれからどこに行くのだろう。世界にお金が溢れていたとはいえ、資本はその希少性もしくはそれを源泉とした力(パワー)を失っていたとは感じなかった。一部に集まってきて、ダブついて、コントロールしきれていなかった(もしくは、コントロールが大味になっていた)という感じの方がなじみがある。小幡氏が日本がバブル崩壊時に失ったと書かれていた「銀行のビジネスモデル」を持つ、預金とは違った形でのローカルな介在者や程よいサイズのファンドが不足していたのではないかと考えた。ちょっと昔も今も相変わらず資本は希少で、接点を持てずに浮いてしまっているアイデアやもう一押しが欲しい経営者ががいっぱいあると思う。オイルとか家とかではなく、もっとちょっとした気泡が。大金が動いたり、レバレッジをかける事で得られるような収益は望み難いだろうけれど、利率だけではなくそれになにか物語のようなものが付加されるのならば、そちらを選ぶ資本家もいるのではないだろうか。私が資本主義の原風景に持つイメージは、理念を持つ創業者に、共感し、やってみろ、とエネルギーとなる資本を託す資本家というロマンチックなイメージ。


神谷 秀樹
早稲田大学政治経済学部
住友銀行入行
ゴールドマン・サックスに転職
92年ロバーツ・ミタニLLC創業
著書『さらば、強欲資本主義』など


小幡 績
東京大学経済学部卒
大蔵省入省
一橋大学経済研究所専任講師を経て、
慶応義塾大学大学院経営管理研究科准教授
ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)
著書『すべての経済はバブルに通じる』など


プロローグ 神谷 秀樹
01 最悪のシナリオは実現するのか?
02 借金依存経済に終止符を
03 金融と経営の原点へ回帰せよ
04 再生はどこからもたらされるか
05 生き残るための条件
エピローグ 小幡 績