オープンシステムサイエンス 所眞理雄 編

これまで、要素還元的手法により進歩してきた科学。しかし、これまでの延長上では「どう解いたらいいのか分からない問題」が残った。これらの問題は、サブシステム間で複雑な相互関係があり、また、システムを停止して分析することができないという特徴を持っている。それに対するキーワードとして持ち上がったのが、「オープンシステム」。それは、互いに関連する多数のシステムからなる統合システムに対する問題解決手法で、本書で提案されているオープンサイエンスという新しい形。この新しい問題解決の手法は、元来の「分析」「合成」という2つの軸に加えて、「運営」という軸を加えた3つ軸によって成立する。本書では、ソニーCSLの研究者達がそれぞれの問題意識とそれに対するアプローチ、そしてこれまでに上がっている成果が提示されている。

茂木健一郎氏のクオリア高安秀樹氏の物理経済学、フランク・ニールセン氏の計算情報幾何学など。どれも、先鋭的で未来を感じさせる話を聞く事ができる。先日の日経紙において、MITの石井裕氏が「出る杭は打たれるが、出過ぎた杭は誰にも打てない」という旨の事をおっしゃっていたが、まさしく、という感じだ。

そう、今は科学の時代なのだ。数学も科学も学校出れば全然使わないという話は既に言われていたし、私自身、自分のやりたいことをするために、さぼる口実として使った。しかし、どうだろう。興味を持った分野を勉強しようと思えば、数式は出てくるし、科学に親しみがある方が、今の時代を楽しめるに違いない。あぁ、あの時やっておけばよかった(親には聞かせられない)。ま、自分のやりたい事をして納得できたからいいのだけれど。ただ、興味さえ持てば母国語でたくさんの本が出版されていた。ラッキー。


まえがき
01 オープンシステムサイエンスとは何か 所眞理雄
02 生物学的ロバストネス ーシステムバイオロジーからのアプローチ 北野宏明
03 履歴の継承都市手の生命 ーエピジェネティクスからのシステムバイオロジー 桜田洋一
04 偶有的な脳 ー動的適応性と認知的安定性を求めて 茂木健一郎
05 セミオティク・ダイナミクス ー言語と意味の新しいパラダイム ルック・スティールス
06 リクレシブ・インタラクション ー将来のコンテンツは我々の中にある フランソワ・パシェ
07 サイバネティクアースへ ーサイボーグ化する地球とその可能性 暦本純一
08 全地球的社会情報の観測と制御 ー無限の複雑さに挑む経済物理学 高安秀樹
09 計算情報幾何学 ー距離の意味を求めて フランク・ニールセン
あとがき/著者略歴/索引