リスクにあなたは騙される D.ガードナー

リスクにあなたは騙される―「恐怖」を操る論理
ダン・ガードナー Dan Gardner
早川書房
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史上最も安全で健康に生きる事ができる私たちが、なぜこんなにも怯え、恐怖しているのか。なぜなら、感情的かつ即時的な判断を行う、私たちの脳の原始的な部分である「腹」(システム・ワン)が強く刺激されているから。本来は、瞬間的な判断は重要な自己防衛システムである。しかし、そのスピード故に正確さを欠いている。ここに意識的な思考を加えるのが「頭」(システム・ツー)であるが、腹の判断に合わせるために間違った理由付けをする事もある。この「腹」への印象操作によって必要以上にリスクを感じ、私たちは心を曇らせる。

では、誰が、煽っているのか。それは、メディアであり政治家であり、コンサルタントや科学者、NGOなどなど。なぜ、そんな事をしているかと言えば、それによって自分に利益があるからである。しかし、彼ら彼女らが、リスクを必要以上に感じた私たちを見て、高笑いしているかと言えば必ずしもそうではない。発言者である彼ら彼女らもまた聞き手と同じ人間であるがために、同じように「腹」に動かされていることもあるからだ。

物事を正確に正確に捉える事は難しい。信憑性、発生確率、被害程度など、考慮する要素はあるけれど、逆にそのリスクの想像が容易であれば「腹」の判断はより評価される事になる。生活において、どれだけ「頭」を使っているだろうか。自分の頭の中でディベートを行い、「腹」の判断を「頭」で一つ一つ解きほぐしていく必要がありそう。できるだろうか。。。


ダン・ガードナー
カナダ、オタワ在住のジャーナリスト
ヨーク大学で法学の学位と歴史学修士号を取得
オンタリオで政策アドバイザーを務めた後、
『オタワ・シチズン』紙の記者となる
現在は同紙のコラムニスト兼シニア・ライター


プロローグ
01 リスク社会
02 2つの心について
03 石器時代が情報時代に出会う
04 感情に勝るものはない
05 数に関する話
06 群れは危険を察知する
07 恐怖株式会社
08 活字にするのにふさわしい恐怖
09 犯罪と認識
10 恐怖の化学
11 テロに脅えて
12 結論 ー今ほど良い時代はない
謝辞/注/訳者あとがき