The Long Tail C.Anderson

Long Tailとは、グラフに表れる長いしっぽ。例えばCDのダウンロード数を、横軸に人気順位、縦軸にダウンロード数を取ってグラフ化する。グラフは、原点近くの切立った崖と正の方向へ続く長い長い水面として表れる。これは、少量の大量にダウンロードされる曲と、大量の少量しかダウンロードされないその他に分かれていることを表わしている。まるで、頭から尾にかけて半分にした首長の草食恐竜のように(首と尾だけで、胴の部分などない)。しかし、新しいアクセス可能性が我々の消費を変えビジネスを変え文化を変える。CDダウンロード数のグラフ結果として表れたLong Tailは人々の嗜好が顕在化したその象徴。これまで、この長い尾に属する作品や商品の存在感はほとんどなかった。人々の目に触れる前に、その他はノイズとしてフィルターにかけられてしまっていた。我々は、hit cultureに生きていた。Top10には入れるか否か、興行的に成功するか否かがその作品自体の評価でもあった。しかし、権威がノイズとして取り除いた中に、人々はそれぞれのシグナルを見つけた。それが満足させてくれるものでさえあれば、人々はメインストリームとニッチの区別をつけなくなった。

しかし、水たまりの中で魚を捕まえるのと、海の中で魚を捕まえるのでは勝手が変わってくる。『甲殻機動隊』はどこにあるのだろうかという本書の例がある。SFの棚だろうか、アニメの棚だろうか。水たまりの中であればなんとかなるが、海ではそうはいかない。選択余地の拡大によって起きた問題を検索システムが助けた。キーワードを打ち込めば作品の方からこちらへやってくる(ようにすら感じる)。さらには、利用履歴の解析によって見ず知らずの作品がアピールしてくる。 Amazonはこの好例だろう。人々は(そして提供側も)、陳列棚(そして倉庫スペース)の枠に縛られる必要が無くなった。作成コスト提示するコストの低下、機会の増加が新たな提供者を生み、長い尾をさらに立派なものにしている。金銭的な興味は無い、創作行為自体への愛着、消費者からのフィードバック。これまでとは違った要素に価値基準を持つ提供者がその中心。これまでゲートキーパーだったフィルターはアドバイザーへとその役割を変え、担い手はブログやレビューへと変化した。コンテンツ/商品をめぐる環境の大きな変化の中に生きている。World of Abundanceはもう1つのキーワード。消費をするために限りない棚の中から選ぶ楽しみがあり、探す楽しみがあり、消費して楽しめる。しかし、それはそれとして楽しみつつも、そこはやっぱり誰かがハッとするようなコンテンツを作りたいし、さらに言えばプラットフォーム作りにも寄与してみたい。どうか、夢で終わりませんように。きれいな装丁。

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Chris Anderson
is editor in chief of Wired Magazine.
He was U.S. business editor at The Economist.
He began his career at the two Premier science journals Science and Nature.
He holds a Bachelor of Science degree in Physics from George Washington University
and studied Quantum Mechanics and Science Journalism at the University of California at Berkeley.


Acknowledgments
Introduction
01 The Long Tail
02 The Rise and Fall of the Hit
03 A Short History of the Long Tail
04 The Three Forces of the Long Tail
05 The New Producers
06 The New Markets
07 The New Tastemakers
08 Long Tail Economics
09 The Short Head
10 The Paradise of Choice
11 Niche Culture
12 The Infinite Screen
13 Beyond Entertainment
14 The Long Tail of Marketing
Coda: Tomorrow's Tail/ Epilogue/ Notes on Sources and Further Reading/ Index


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