地学のツボ 鎌田浩毅

火山、地球、生命、宇宙に関するツボを押さえようという地学の本。著者は、京大で全学共通科目「地球科学入門1」を教える人気講師。伝えようとする気持ちが生んだであろう上手い言い回しが本書でも散見された。

例えば、近年の話題としては「冥王星が惑星から外れた」というものがある。その理由には、惑星であることの条件の一つ「軌道の近くで際だって目立つ独立した存在であること」への不適がある。微惑星を引き寄せて自らのモノにするぐらいの際立った大きさがあるかということだが、著者は、これを「軌道近くにある宇宙のゴミをきれいに掃き寄せることができるか」と言い換えて説明する。おそらくこの冥王星の話題は中学高校の授業でも教えられている内容だと思われる。著者は、他科目にはない地学の魅力を、最先端の内容が授業で教えられていることだと指摘する。きちんと説明すれば先週印刷された論文でも伝えることができるのだ。だから、地学の授業を受けた時期によって蓄えられている知識に違いがあると思われる。しかし、実際には高校生の地学の履修率は7%を切っていることから考えて、一般的に言われていたり他教科で引用されるような内容に知識が限定され、就学時期による差はあまりなさそうだ。地学は地震や地球などかなり身近なリアリティを感じることができる内容でありながら、とても大きな(タイム)スケールを扱うことができる学問。最初のきっかけさえあれば気に入る人は多いのでは。

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鎌田 浩毅
東京大学理学部地質鉱物学科卒業
通産省地質調査所をへて
京都大学大学院人間・環境学研究科教授
理学博士
著書『マグマの地球科学』など


はじめに
01 地球は生きている ー地震と火山
02 地面は動く! 地学におけるコペルニクス的転換
03 地球の歴史
04 地球変動による生物の大絶滅と進化
05 大気と海洋の大循環
06 地球の外はどうなっているか ー太陽系と地球
07 進化し続ける宇宙への探求
あとがき/さくいん


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