人は原子、世界は物理法則で動く マーク・ブキャナン

社会物理学で人間行動を読み解こうという試み。金融市場や政治、ファッションの世界で見られる重要もしくは純粋に興味をかき立てられる多くの社会現象を理解する唯一の手だては、人間ではなくパターンを考えることだと主張。一見複雑に見えても、いくつかの条件付けによって同じ結果を達成することができる。社会のパターンはフィードバック作用によって人々に影響を及ぼし、彼らの行動を一定の方向に導くことになり、そして、パターンが各人の選択の幅を狭めることで、パターンをいっそう強力なものにして、勢いと影響力が増大する。フィードバックにより、旧来のパターンは新たなパターンの成長を促し、パターンは更新される。

池谷裕二氏の『単純な脳、複雑な「私」』の中で、シンプルな条件付けから(一見そういう条件付けだけでは達成不可能に思われる)複雑な結果が生まれることを示したシュミレーションがあった。人間は追いつめられると情報収集能力が落ちてしまうし、集団心理と言えるだろうか、その集団を構成している典型的な人物の性格が集団の性格としてそのまま反映されてしまう。だから、集団を構成する人々の行動をつぶさに見ていけば、その背後や内部にある論理や傾向を見ることができるのかもしれない。人間として私も、パターンで動くとか言われると「単純なやつめ」と言われているような気にはなる。しかし、そこはあせらずに内容をよく整理して受け止めていきたい。著者も、数個の方程式にまとめられるものは、歴史のなかには何も無いと言っている。あくまで、考え方を適用して人間行動に分け入ってみようという試みだと思われた。

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マーク・ブキャナン
物理学で博士号を取得
『ネイチャー』、『ニューサイエンティスト』などの編集者を経て、
現在フリーのサイエンスライター
著書『複雑な世界、単純な法則』など


はじめに
01 人間ではなく、パターンを考える
02 世界が複雑なのは人間が複雑だから?
03 人間は本当に合理的なのか
04 適応する原子
05 模倣する原子
06 協調する原子
07 民族はなぜ憎しみあうのか
08 金持ちがさらに豊かになる理由
09 過去への前進
謝辞/訳者あとがき/原注


『単純な脳、複雑な「私」』はおすすめです。