「お金」崩壊 [★★★★☆]

 おはようございます
 「お金」崩壊 青木秀和著 を紹介します。
 
 「お金」崩壊 (集英社新書 437A) 756円
 
 ・著者略歴
   緑の共生社会研究所 共同代表
   市民研究者
   主著 『公共政策の倫理学』 (川宮信郎との共著)

 
 ・目次

   第1章 空洞化する貯蓄
        国の債務は834兆円、地方の債務は201兆円 / 個人金融資産は1533兆円 /
        金融機関の役割 / 市中消化の原則 / 市中消化の原則が法定された理由 /
        逆手に取られた市中消化 / 交付税特別会計の借金 /
        「財政投資融資」という迷宮 / いんちきな財政「改革」 /
        三大原資の創設経緯 / 富の移転手段としての財政投資融資 /
        さらに空洞化する日本の貯蓄 / 市中調達される介入資金 /
        株式市場に還流した介入資金 / 米財政赤字を支える日本の貯蓄 /
        米国には「現金」、日本には「借金証文」 /
        厚生年金基金と「代行」 / 代行返上 / ダイコウヘンジョウウリ /
        見逃された本当の年金危機 / りそな救済 / 公的資金とは / 借金返済機構 /
        使ってしまったお金は取り返せない /
  
   第2章 なぜ公の債務は増え続けるのか?
        借金への誘い / お金の三機能 /
        使うときに役立つ機能 と 使わないことで効果を発揮する機能 / 借金の本質 /
        借金すると「貧しく」なる / 政府は「お金を増やす」ための経済主体ではない /
        借金自動増殖のメカニズム / 借金破綻を防ぐための最低条件 /
        金利で借金を返すな! / 日本における「公言された破産」 /
        幕藩体制は「償還を装った破産」/ 預金封鎖・第二ラウンド / 借り手の経済学
   
   コラム 夕張市に凝縮された自治体の昨日、今日、明日

   
   第3章 お金の本質
        資金循環 / 中央システムの成立 / 銀行券のルーツ /
        「負債の絶えざる増大」という宿命 / 金本位制の矛盾 / 完全なる不換紙幣 /
        資産から債務へ / グローバリゼーションの向かう先

   
   第4章 お金を<冗談>にしないために
        生産とは / 資源循環 / 化石燃料消費が抱える二つのリスク / ピークオイル /
        「使えない」原子力発電 / バイオ燃料という悪夢 / 最後の人間となる特権 /
        エネルギーの適材適所 / 対立する資金循環と資源循環 /
        終焉に向かう「石油・ドル本位制」 / 最低を目指すレース /
        積極的意味を持つ「人口減少」 / 焦眉の急は「地方の復活」 /
        必要なのはシステムの確立 / それほど「悪くない」未来 /
        「使える」江戸モデル / 本当の「コスト負担」に目覚めるとき /
        お金も劣化すべし / 極限に達する物理的負債 /
        社会経済をみる二つの視点 / 問題の核心は「お金の商品化」 /
        二つの循環のトータルな把握

   
   コラム 軍縮を語らない「温暖化防止」キャンペーンのインチキ

   
   おわりに


 
 ・各章要点
   第1章
   ○現在の日本の財政状況
     国債に限って見てみても、月収40万の家計が4600万のローン残高を抱えている状態
   ○戦後に起きた超インフレの理由
    日銀からの潜在的なお金が 噴出したことが上げられますね。
    この結果から市中消化の原則が法定されました。
    市中消化の原則というのは、
    政府が国債や借入金を日銀以外から調達しなければならないということですね。
   郵貯簡保・保険の歩み
    成立の様子が描いてあります。
    当時 高齢者年金の受け取り開始年齢が、平均年齢よりも高かったという事実には苦笑い。 (^^;
   ○「貯蓄がどうなるか」という感心を捨てる
    住みやすい社会、そのためのシステム、それを有効に活かすための お金との付き合い方を
    著者は、提案しようとしています。
    しかし、同時に私たちの貯蓄が何に使われているかには 注目しなければなりませんね。
    本書で例に挙がっているのは、2003年1月から2004年3月までの為替介入ですね。
    為替介入の結果 日本政府が手にした米ドル 約3200億円 が米国債に投資されました。
    これは、9.11 以降のアフガン・イラクにおける米軍の戦費の9割に及ぶそうです。

   
   第2章 
   ○A.スミスの警鐘
    スミスは、多額の国債が発行されることに警鐘を鳴らしています。 信じるなと。
   ○日本がした2度の破産。
    鎖国以降日本は、2度破産しています。1度目は明治維新、2度目は昭和体制黎明期です。
    これは、負債総額が起こした出来事です。我々に必要なのは 「借り手の経済学」 ですね。
  
   第3章
   ○英国に端を発する「中央銀行システム」
    中央銀行システムとは何でしょうか。
    中央銀行が発行する紙幣が金との兌換に裏付けられることで、
    流動性を増し、紙幣の流通市場を形づくるシステムのことですね。
    しかし、この金による兌換の裏づけは崩壊してしまいました。
   ○「ドル・ショック」 以降の 「完全なる不換紙幣」
    紙幣市場についていた重石がなくなってしまったことを意味していますね。
    以前、お金のだぶつきが気になっていましたが 得心がいった気がします。 

   
   第4章
   ○貨幣を劣化させなければならない
    ドイツ人実業家のシルビオ・ゲゼルは貨幣の価値を劣化させることを提案しています。
    劣化させるというのは、利子の逆を想像するといいですね。
    少しづつ、残高が減っていくわけです。
    こうすることで、交換手段としての紙幣を改革することが出来るそうです。
   軍縮は環境対策はに大きな貢献をする
    軍縮というのは、私の盲点でした。
    戦闘機や空母を動かすのには、膨大な石油を消費しますからね。
    米国には、出来もしない排出量制限や生活の改善を求めるよりも軍縮を期待したいですね。
    こちらも、残念ながら期待薄ですが。 (^^;
    本書後半では、環境問題にも重点を置いて 扱っています。

 
 ・おすすめ度 ★★★★☆
   まだ私の中で折り合いの付いてない部分もいくつかあるのですが、
    (例えば、環境問題に関しての部分や負債の移転)
   意味のある一冊であったとは思っています。
   何より、歴史的なことに関する部分は 手放しでおもしろいと思います。
   二ノ宮金次郎が経世家として優れていたことも 初めて知りました。

 
 ・おまけ
   以前紹介した 『経済の教科書』 では、
   もう一度鎖国できるか?ということに関して消極的な意見でしたが、
   本書では、比較的ポジティブな態度でした。
   別に両書とも、鎖国しろとは言ってませんが
   いいシステムを持っていたのではないか? という点では一致しているのではないでしょうか。
   貧乏はあるけど貧困のない社会というのは なかなか楽しいかもしれませんね。
   「昔は良かった」なんて言うつもりないよ。