パラダイス鎖国   [★★★★★]

おはようございます。
今日は、『パラダイス鎖国』(海部美知) を紹介したいと思います。
パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書 54) 760円
大変濃縮された一冊でした。
キラー・コンテンツ満載なので、まとめるのに一苦労しました。


About author

 海部美知
 一橋大学 社会学部 卒
 スタンフォード大学 MBA
 ENOTECH Consulting 代表
 HP michikaifu’s diary


Contents

 はじめに
 第1章  「パラダイス鎖国」の衝撃
    1 失われゆく「海外」の輝き
        −「ハワイより温泉」 海外旅行に行かなくなった日本人
      「Jポップ+邦画」対 「洋楽+ハリウッド」・
      パラダイス鎖国は、いいのかいけないのか?・
    2 「HEROES/ヒーローズ」に見る日本人
      孤高のマイノリティ、アジア人・ジャパンバッシングからポケモンヘ ・
      メディアに見る日本人イメージ・映画の中の「アメリカのアジア人、日本人」・
      ヒロ・ナカムラの普遍性と特殊性
    3 パラダイス鎖国・産業編
      携帯電話のパラダイス鎖国・「自己鎖国」に陥る携帯電話メーカー・
      電機産業全体が「内弁慶ビジネス」
 第2章 閉じていく日本
    1 輸出は「悪」か?
      疾風怒涛の自動車産業における2つのグローバル化公式・
      「超」円高時代の第2次ジャパンバッシング
      「チープ革命」によるジャパン・ブランド崩壊と厭戦気分・
      新しいグローバル化の公式の不在、インセンティブ・システムの混乱
    2 閉じていく日本のカタチ
      国際競争力凋落の実態・大国の条件− 国内市場が大きい日本・
      「ジャパン・ナッシング」現象・先進国の条件 −健康で安全な日本・
      現代の大国二ッポンの姿
    3 パラダイス鎖国という現実
      「パラダイス鎖国」現象の本当の問題
 第3章 日本の選択肢
    1 21世紀の「ゆるやかな開国」
      ウェブによる情報革命・イノベーション・ベースの経済へ
    2 「豊かさ」の戦略
      孤高のマイノリティ、世界の中のニッポン・「果てしなき生産性向上戦略」2.0・
      「試行錯誤戦略」
    3 アメリカに何を学ぶか
      アメリカは「パラダイス鎖国」の先輩・各種モデルが混在するアメリカ・
      「内なる黒船」とイノベーション・ベースの経済・
      シリコンバレーの「厳しいぬるま湯」・
      広く自由な知の流通
    4 多様性の国を目指して
      ゆるやかな開国のイメージ・「内なる黒船」を量産する「ぬるま湯」・
      混沌を恐れるな・開国後の新しいグローバル化公式
 第4章 日本人と「パラダイス鎖国
    1 モーレツ社員でもなく、引きこもりでもなく
      「プチ変人」を積極的に育て、受け入れる・
      ぬるま湯を求めて「グローバル化」する・
      「ロングテール」を上手に利用する・
      「ハングリー」でない時代のインセンティブ設計・
      個人の戦略としてのグローバル化
    2 雇用慣行が日本人を変える
      捨てる神あれば拾う神あり・ベンチャーの「出口」・
      外部の頭脳をうまく利用する・
      レジュメを美しくする
    3 「脱・鎖国」の日本人
      それでも内なる黒船は必要・軽やかなグローバル化を選ぶ人々・
      「脱・鎖国」の新・日本人像とは
 あとがき
 解説  梅田望夫


Information
 本書は、著者のこんな疑問から始まります。

 中からも外からも、つながろうとする力が弱まり、
 日本は孤立しつつあるのではないだろうか?

 ○日本の特徴
   1.世界2位の経済規模を持ち、その地位は現在でも安泰
   2.アメリカと同様に国内市場が極めて大きい
   3.アメリカでの存在感は最近低下している
   4.日々の生活で実感できる「豊かさ」指標は欧米をしのぐ水準
   5.国民人員が享受できる基本的なもの以外では、整備や変化が進まない
   6.経済は90年代以降の停滞期から完全に抜け出せてはいない
   7.財政赤字、累積債務、政府部門の効率の悪さが際立った問題
 ○パラダイス鎖国であることの問題点
   1.「ジャパン・ブランド」の衰退し生活水準の低下につながる
   2.日本社会の変化が遅く、外界の変化についていけなくなる
   3.「海外への自然なあこがれ」を日本のインセンティブにすることが出来なくなる
   → 現状に必要以上に適応しすぎ、肥大化すれば、行き着く先は、「恐竜化」
 ○日本の選択肢
   1.「レガシー(過去の遺産)の戦略を継承するやり方」
     従来路線を少々手直しし、継続する「マイナーモデルチェンジ」としての
     「果てしなき生産性向上戦略」のバージョン2.0 を目指します。
   2.「新しいやり方」
     これまでの路線とまったく違う、「フルモデルチェンジ」です。
     霧の中で見えないものに向かって敢然と進むこのモデルは、
     シリコンバレー型試行錯誤方式でもあります。
     この方式を考える上で、「けものみち」戦略が一つののモデルにですね。
 ○同志アメリ
   実は、日本とアメリカは「パラダイス鎖国」の同志なんです。
   日本よりさらに大きな国内市場を持ち、生活水準の高い暮らしが長いアメリカは、
   外国のことに全く興味がなく、
   国内だけに閉じた生活で不便を感じない人・企業が大半を占めています。
   実は、ニューヨーカーや、シリコンバレーの住人は 例外的な人たちです。
 ○それでも強いアメリカの秘密
   各種のモデルが混在しているという多様性が、アメリカの大きな特徴です。
   車産業など強力なレガシー勢力が存在するにも関わらず、
   それがすべての変化を妨げてしまう圧力・抵抗にはならなりません。
 シリコンバレーの「厳しいぬるま湯」
   シリコンバレーは、アメリカ国内で「黒船」の役割を果たすことが多く、
   さらに その内部でも多様性と試行錯誤を奨励する風潮が強いです。
   既存勢力ににらまれそうな話であっても、おもしろければ
   まずは話を聞いてみようという姿勢があり、
   外部勢力の圧力からは周りが守り、育てます。
   シリコンバレーには 新しい事に挑戦し、明日をも知れぬ厳しさがある一方で、
   居心地の好い暖かい雰囲気があります。シリコンバレーは「厳しいぬるま湯」です。
 パラダイス鎖国の開国
   「色々なレベルの 色々な活動で外の世界とつながっている」
   そんな“ゆるやかな開国”を目指すのがいいですね。
   自分のやりたいことを我慢して無理するのでなく自然にグローバル化していきます。
   ゆるやかな開国の大きな方向性としては、「多様性」があります。
   利害や価値観が対立する人・グループを全てまとめ上げ、
   日本という大きな仕組みの中に共存させます。
   日本市場という「規模」のメリットを、異質なモノや対立するモノを含め、
   多様なモノが共存する場所として利用することに。
   あらゆる方向性の中には、
   従来型の「果てしなき生産性向上戦略」が存在していても構いません。
   ただ、これらとは異質な
   「内なる黒船(新しい種類のビジネス、職業、社会運動)」にも、
   活躍できる場を与える必要があります。
   戦後の混乱期にホンダやソニーが立ち上がったように、
   混沌は試行錯誤で新しいものを生み出すエネルギーとなるのです。
   新しい企業・ビジネスを
   「いまや主流の考え万」「暗黙の了解事項」として社会に認知させる事も可能です。
   さらに、新しいビジネスや分野にほ、それほど専門家がいない可能性があります。
   そんな そこそこマーケットのある分野は、
   ロングテール人間にとって意外な宝の山になるでしょう。
 ○いざ 開国・開国後を担う
   学歴・職業の経験を積んでいく上で、
   アメリカの 「レジュメ(履歴書)を美しくする」 という考え方が参考になるのでは。
   単に有名大学・企業の名前が並んでいるだけでなく、
   自分のやってきたことの一貫性と説得力が見えるのるのが好いですね。
   将来的な一貫性というよりも、自分の在庫を点検し 次のステップでどう使うかが大事。
   何をすればいいかわからないときは、とりあえず英語を勉強する。
   英語は世界で最も潰しがきく万能スキルだからですね。
   前向きに、少しずつ、開国へと向かってゆこう。
   新しい日本人像は、遠い世界に住む偉い人ではなく、たくさんの普通の人たちの中にある!


Recommend [★★★★★]
 今後の展開を考える上での vital for thought になるのではないでしょうか。
 後光が射してくるような一冊です。ぜひご一読ください!


What's more
 最近落ち着いた感のある、ナンバーポータブルですが
 海外では、10年ぐらい前からあるところもあるそうですね。 (台湾だったかな?)
 音楽が聴けるようになり テレビが見れるようになり ネット閲覧もスムーズにできるようになり
 夢のような、ディバイスとして完成しつつありますが、
 できることが増えたにもかかわらず、ケイタイはケイタイということで、
 子供の利用時間が長くなったと非難されますね。
 かわいそうな気がするぐらいです。
 とどめは、「ケイタイを子供に持たせないようにしよう」だそうです。
 ケイタイ本体の生産業界における再編がさらに加速しそうですね。
 海外へ向かう力は残されているのでしょうか? (一番有力なのはauかな?)
 ケイタイの変わりに、一台ずつEMの付いたノートパソコンを持たしてやりましょうよ。


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