世界を不幸にしたグローバリズムの正体

『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』(J.スティグリッツ著)


世界を不幸にしたグローバリズムの正体 1890円 390p 05.31.2002


Contents
序 最も不透明な機関IMFアメリ財務省の偽善
1 国際機関が約束したグローバリズムの恩恵
2 破られた約束
3 民営化・自由化の罠
4 東アジアの危機―大国の利益のための「構造改革
5 誰がロシアを見捨てたのか?
6 アメリカを守る不公正な「公正」取引法
7 「中国の成功」と「ロシアの失敗」
8 収奪者たちの論理
9 世界を幸せにするグローバリズムの道
謝辞/原注/解説


Information
新たな国際機関
まるで、「世界政府の無い世界統括」のようだ。
WB、IMFWTOといった少数の特定の商業的・金融的と結びついた機関・担当者が全体を支配している。
その決定に大きな影響を受ける多くの人々は、ほとんど発言権の無いまま取り残されている。


市場原理主義という経済学に特有のものの見方が全てに優先されることが不満を掻き立てている。
経済をできるだけ完全雇用に近い状態に維持し、拡大的な(少なくとも縮小的でない)金融政策と財政政策が必要である。
グローバリゼーションに対する反対運動は、グローバリゼーションそのものへの反対というよりも、特定のドクトリンすなわち国際金融機関が押し付けてきたワシントン・コンセンサスに対する反対である。
いいかえれば、たった一組の政策が正解として存在するということに対して反対しているのである。
今後、グローバリゼーションが機能するためにはルールの策定を助ける国際機関が必要になってくる。


閉鎖的な環境
時代も違えば、国も違う。どの国もそれぞれの戦略を考案し、民主的な政治プロセスを経て自国にふさわしい選択をする必要がある。
これらの国々に 情報と手段を与え、その選択の結果とリスクを理解できるようにするのが、国際経済機関の役目であるはずだ。
自由の本質とは、自らが選択をする権利であり、その選択に責任を持つ権利に他ならない。


なぜIMFを批判するかといえば、その視野の狭さ(つまり経済の分野しか眼に入らなかった)と、きわめて限定的な経済モデルを採用したことである。
最大の課題は、機関そのものにあるだけではなく、その思考パターンにもある。
グローバリズム潜在的利益を現実のものにするためには、環境に配慮すること、貧しい人々が自らの生活に影響を与えるであろう決定に発言権を持てるようにすること。
たとえば、WBのインスペクション・パネルとか世界ダム委員会のマルチ・ステイクホルダー・プロセスかな。
インスペクション・パネルは、特定のプロジェクトで影響を受ける2人以上の個人のうち代表者、もしくは代理人が提起すれば、かならずWBトップ審査で可否を決定する必要がある。
マルチ・ステイクホルダー・プロセスは、利害関係者(企業・政府・住民)が意見交換をするという場。


改革要旨
必要な7大改革
1.短期資本の流れには、直接的な当事者以外の関係者が費用の負担を受け入れること
2.破産法の改正とスタンドスティル
3.救済措置に依存する度合いを減らす
4.先進国と途上国の両方における銀行規制の改善
5.リスク管理の改善
6.セーフティーネットの改善
7.危機対策の改善


About author
J.スティグリッツ著
アーマスト大学、マサチューセッツ工科大学大学院卒業
英国ケンブリッジ大学で博士号を取得
エール大学、オックスフォード、プリンストンスタンフォード大学で教鞭をとる
93年クリントン政権の大統領経済諮問委員会に参加(CEA)
95年6月よりCEA委員長に就任し
97年CEA委員長を辞任後、世界銀行の上級副総裁兼チーフ・エコノミストを00年まで務める
01年のノーベル経済学賞を受賞
著書 『人間が幸福になる経済とは何か』 『フェアトレード』など


著者は、
グローバリゼーションそれ自体は、善でも悪でもない。
ゆっくりとしたプロセスをとれば、伝統的な制度や規範が圧倒されることなく、新たな難題に適応、対応できるはずだ。
としており、潜在的には善行を行う力を持っていると期待しています。