世界金融危機 開いたパンドラ 滝田洋一

世界金融危機 開いたパンドラ (日経プレミアシリーズ) 893円 235円 08.12.08
サブプライム爆弾が07年に爆発したのは不幸中の幸い。 あと1年先だったら米欧の金融機関から、日本の金融機関はしこたま売り込まれていただろう。 〜多くの罪
・「株民」と呼ばれる中国の個人投資家は1億人を突破した。 いまや中国の株主は世界最大。 〜きしむ米中関係
・社会不安まで引き起こした春先の食料高騰はなんだったのかと思う。 需給要因もさることながら、商品市場になだれこんだマネーの役割が大きかったと実感。 〜ドットコーン・バブル弾けて
・経済危機は地政学の風景をがらりと変えつつある。 〜君知るや極北の国の危機
・ゼロベースの再建策を拒むムードが蔓延するようなら、企業はどんどん日本から逃げていく。 カネの山は積み上げても国内で使い道を見つけられない「豊富の中の貧困」が慢性化する。 〜雇用規制撤廃と首都圏規制の撤廃
・混乱の収拾には政府の役割は欠かせないにせよ、資源や資金の配分で政府が市場を上回る能力を持ち合わせているとは思えない。 〜政府の役割はどこまで


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滝田洋一
米州総局編集委員
慶応義塾大学大学院卒
日本経済新聞社入社
金融部、チューリヒ支局、経済部編集委員、論説副委員長を経て、現職
著書 『日本経済不作為の罪』など


序章 リーマン破綻が開いたパンドラの箱
救わなかったのか、救えなかったのか/凍りついた金融市場/AIG救済の修羅場/世界大不況の瀬戸際/ソロスの警告
01 金融がのたうち世界が揺れる
金融危機を論じなかった洞爺湖サミット/最初のサミットは石油危機がテーマ/戦力逐次投入の愚再び/住宅金融公社に暗黙の政府保証/第一幕はベアー救済劇/ようやく動いたNY連銀/「油食住」の変調/商品ファンドに長期運用資金が流入/急拡大する新興国の経常赤字/ドル安の副作用/米、先物規制へ起動修正
02 炸裂したサブプライム爆弾
証券化商品は「ミンチ肉」/世界中に投資家が分布/仕事もカネもなくても家が持てる/日本の住専問題にそっくり/貸し手は米欧の大手金融機関/競売増え中小不動産の値下がりに拍車/07年の市場からの警告/上がり始めた長期金利/パリバ・ショックの前に格下げパニック/見えないリスクの飛び火/銀行がオフバランスでCDOを保有/多くの罪/FF金利下げをちゅうちょしたバーナンキグリーンスパンが残した膨大なツケ
03 グローバル化の臨界点
台頭した巨大パワー/「BRICs」体現する不思議の国/読めない意思決定/新冷戦の兆し/きしむ米中関係/中国版政府ファンドの虚実/中国のヘッジ取引の帰結/アジア共通の外貨準備管理構想/中国は黙って米国売り/買い負ける日本/新たな一億人の貧困層/新エネルギー政策の名を借り農業保護/ドットコーン・バブル弾けて/君知るや極北の国の悲劇/米農業の宴の後/立ち現れる資源のガリバー
04 不満な成長か、停滞の分配か
逆走するニッポン政治/強まる霞ヶ関の抵抗/小泉改革とはなんだったのか/郵政民営化の意味/米国の影は「陰謀」でなく「事実」に過ぎない/「上げ潮路線」の本質/長期金利と成長率の神学論争/絶不調の個人消費/なぜ企業は賃金を上げないのか/雇用規制の撤廃と首都圏規制撤廃/買収ファンドの功と罪/市場原理主義批判/盛り返す分配政策/玉石混交の景気対策
05 2008年秋 大恐慌の足音
危機連鎖阻止への賭け/「資産保全者」の道選ぶ/残されたデリバティブの時限爆弾/リーマン・ブラザーズ、たった1週間の破綻劇/跳ね上がる銀行間取引金利/大統領選の呪縛/「このままではフーバーの二の舞」/投資銀行の終焉/欧州に飛び火した金融危機/まさかの米下院の法案否決/応急の「水漏れ防止」/1万ドルを割ったダウ平均/公的資金注入の裏技/「重要な金融機関は潰さない」/バーナンキが書いていた「財」の字/追い込まれた危機対応
終章 危機脱却への模索 希望はあるか
米国の中間層以下は借金漬け/オバマノミクスとヘリコプターマネー/証券化商品の買い上げが必要/90億ドルの重さ/G20金融サミットで問われたもの/政府の役割はどこまで
あとがき