The Illusions of Entrepreneurship S A.Shane

The Illusions of Entrepreneurship: The Costly Myths
Scott Andrew Shane
Yale Univ Pr
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現代は起業家の時代で、カリフォルニアの有名大学に通う大学生がドロップアウトしてVCから資金を調達し、ハイテク分野で起業して一躍大金持ちになる。こういったイメージは、起業家を考えた際に人々の頭にのぼりやすい。しかし、これらは象徴的ではあるが、メインストリームではない。本書では、起業に詳しい教授である著者が、一般的な企業や起業家に対するイメージから、データによってその霞を払い、その全景をくっきりしたものにしようという試みがされている。

最初にあげたようなイメージは全て非メインストリームのもの。例えば、起業件数は80年代よりも減っている。これは、本書でいうところの起業が農業関係などを広く含む、"self-employed"(自営業者)を扱っているからでもあるが、米国の産業形態の変化に伴い、起業件数は減っている(それでも結婚数よりも多い/代わりに発展途上国の方が高い)。シリコンバレーのあるカリフォルニアは米国の平均以下に留まっている。さらに、起業する人というのは、普通のおじさんであり、資金は貯金か借金でまかなわれている。ベンチャーキャピタルが投資するうち、92%は全体の7%にすぎないハイテク系やヘルスケア分野に投下される。確かに、起業は一発当てる方法ではあるが、そういった富のうち73%が上位10%によって占められている。少数のIT起業家が時代の寵児となっているのは、おそらくその上位10%に名を連ねているからであるが、そういった普通でない規模の企業によって経済成長効果も起こっている(逆に言えば、先進国においては普通の起業によってはそれほど大きな波及効果が期待できない)。

あまり、わくわくしない内容ではあるが、著者は決して起業を否定していない。間違った言説(Myth)によって目標を見誤っていることを指摘する。多くの人が、専門知識の無いままに成功率の低い分野で起業しており(分野によって成功率が違う)、また、その事業計画も荒いもの。カリスマなど特殊な精神性によって成り立つものではなく、"You can prepare youself to be a better entrepreneur"なのだ。一般的な起業を行うなら、しっかりとビジネスの勉強をし綿密に立案して、あせらずやるのがいい。特に、既存企業で働くことによって得た知識や経験は、起業の際に大きな助けになるようだ。

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Scott A.Schane


Acknowledgments
Introdution
01 America: Land of Entrepreneruship in an Entrepreneurial Era?
02 What Are Today's Entrepreneurial Industries?
03 Who Becomes an Entrepreneur?
04 What Does the Typical Start-Up Look Like?
05 How Are New Businesses Financed?
06 How Well Does the Typical Entreprener Do?
07 What Makes Some Entrepreneurs More Successful Than Others?
08 Why Don't Women Start More companies?
09 Why Is Black Entrepreneruship So Rare?
10 How Valuable Is the Average Start-Up?
Conclusion/Notes/Index