なぜ投資のプロはサルに負けるのか? 藤沢数希

なぜ投資のプロはサルに負けるのか?― あるいは、お金持ちになれるたったひとつのクールなやり方  アルファを求める男たち――金融理論を投資戦略に進化させた17人の物語

『なぜ投資のプロはサルに負けるのか?』(左)は資産運用に関して書かれています。著者は、現役でクオンツをされている方です。結論として、(どうしても投資をしたいなら)アセットアロケーションを組んで長期国際分散投資することを勧められています。その理論的側面として現代ポートフォリオ理論や効率的市場仮説があるのですが、ベースとなるファイナンスの思考法から積み上げ、順に論を導いてくれます。
市場はニュースを受けて運動します。ニュースを織り込めない(予知できない)私たちは、市場のランダムウォークに翻弄されるわけです。だから、運用にギャンブル的要素があればお猿さん(あとダーツとか)が平均以上の運用成績を上げることも可能なわけです(投資家のように有頂天になったり悲嘆にくれたり、クビになったりはしないでしょうが)。
効率的市場仮説の面白いところ(今まで気付きませんでした)は、皆が市場に興味を失って、パッシブ運用をすればするほど、市場は効率性から乖離してしまい、逆に市場に打ち勝とうと目を皿にすればするほど効率的な市場に近づいていくというパラドキシカルな要素です。ですが、現時点の市場において、あまり興味のない人間がインデックスで運用しても、かなり合理的なリスクとリターンが得られるのは、(確率的に平均以下の成績に終わってしまうこともありますが)プロの方々が日々目を皿にしてくれているおかげでもある、ということになります。少し、頭がスキッとした心地がします。
ファイナンス理論といえば最近、P.バーンスタイン著の『アルファを求める男たち』(右)が出版されました。『証券投資の思想革命』の続編ともいえる本書には、ファイナンス理論を打ち立てた人々が登場しますが、考え方が少し変化してきた方や、違ったアプローチを試みている方がいて興味深かったです。昔と言っていることが違うというのは、継続して思考して勉強されている証拠ですから、決して否定されるべきことではないですね。しょっぱなから解に辿りつけること、正しい解釈ができることというのはそうそうないですから。ひたすら、自分の学んできたことにしがみついたり、昔言っていたことをなかったことのように扱うことよりもかなり前向きだと思います。ぜひ、自分もそうありたいです。残念ながら著者P.バーンスタイン氏は今年の6月に逝去されました。