ぼくらの頭脳の鍛え方 立花隆/佐藤優

ぼくらの頭脳の鍛え方 (文春新書)  「知」のソフトウェア (講談社現代新書 (722))

『ぼくらの頭脳の鍛え方』は、以前文藝春秋に掲載された立花隆氏と佐藤優氏の対談が新書化されたものです。それぞれが、推薦本をあげ、400冊の教養書がリストアップされてます。立花氏は「本書の読者層」という視点から、佐藤氏は「「教育」の現場に携わる人を思い浮かべて」という視点から選書しています。
本書の副題は「必読の教養書400冊」となっています。「教養」というのは、今ひとつ説明のしにくい言葉ですが、佐藤氏は「知識というのは業界の常識ですが、教養は「知」の世界に入るための入場券だと思います。」(p.13)という表現をしています。
本書で推薦されている本の中には、一時代において強烈な思想影響を与えた本も含まれています。本の中には、人生に強力な影響力を与える危険なものもありますが、そういった(特に悪い影響を与える)本は、大きな文脈の中で読む必要があります。危険な本も、その位置づけや後世における批判を加味した上で向き合えば、その影響力を押さえ込むことができます。ですが、私の頭の中ではそういった知の体系は未構築です。だから私は本書を手元に置いて、今はお二人の頭脳(の中にある知の体系)に助力いただこうと思いました。
私は本書を読了後、特に印象深かった箇所を抜き書きしました。立花氏の『「知」のソフトウェア』に影響を受けて、私も読書メモを作っています。『「知」のソフトウェア』に紹介されているように紙に書くのではなくGoogle-Docsで作成しています。タイピングに慣れるとペンで書くのがおっくうになったからです。ネット上にあれば、検索できるし、かさばらないし、どこでも見れるのがいいですね。しかし、今ひとつ上手く活用できていないような気がしているのが現状です。なんというか、こう、もっと1つ1つの情報を有機的に繋げたいものです。

なぜ投資のプロはサルに負けるのか? 藤沢数希

なぜ投資のプロはサルに負けるのか?― あるいは、お金持ちになれるたったひとつのクールなやり方  アルファを求める男たち――金融理論を投資戦略に進化させた17人の物語

『なぜ投資のプロはサルに負けるのか?』(左)は資産運用に関して書かれています。著者は、現役でクオンツをされている方です。結論として、(どうしても投資をしたいなら)アセットアロケーションを組んで長期国際分散投資することを勧められています。その理論的側面として現代ポートフォリオ理論や効率的市場仮説があるのですが、ベースとなるファイナンスの思考法から積み上げ、順に論を導いてくれます。
市場はニュースを受けて運動します。ニュースを織り込めない(予知できない)私たちは、市場のランダムウォークに翻弄されるわけです。だから、運用にギャンブル的要素があればお猿さん(あとダーツとか)が平均以上の運用成績を上げることも可能なわけです(投資家のように有頂天になったり悲嘆にくれたり、クビになったりはしないでしょうが)。
効率的市場仮説の面白いところ(今まで気付きませんでした)は、皆が市場に興味を失って、パッシブ運用をすればするほど、市場は効率性から乖離してしまい、逆に市場に打ち勝とうと目を皿にすればするほど効率的な市場に近づいていくというパラドキシカルな要素です。ですが、現時点の市場において、あまり興味のない人間がインデックスで運用しても、かなり合理的なリスクとリターンが得られるのは、(確率的に平均以下の成績に終わってしまうこともありますが)プロの方々が日々目を皿にしてくれているおかげでもある、ということになります。少し、頭がスキッとした心地がします。
ファイナンス理論といえば最近、P.バーンスタイン著の『アルファを求める男たち』(右)が出版されました。『証券投資の思想革命』の続編ともいえる本書には、ファイナンス理論を打ち立てた人々が登場しますが、考え方が少し変化してきた方や、違ったアプローチを試みている方がいて興味深かったです。昔と言っていることが違うというのは、継続して思考して勉強されている証拠ですから、決して否定されるべきことではないですね。しょっぱなから解に辿りつけること、正しい解釈ができることというのはそうそうないですから。ひたすら、自分の学んできたことにしがみついたり、昔言っていたことをなかったことのように扱うことよりもかなり前向きだと思います。ぜひ、自分もそうありたいです。残念ながら著者P.バーンスタイン氏は今年の6月に逝去されました。

やればできる 勝間和代

やればできる―まわりの人と夢をかなえあう4つの力  

12月も半ばを過ぎようとしています。年末年始、昔なら田舎に帰省したり、買い出しをしたりというイベントがありましたが、ほとんど無くなってしまいました(近所のスーパーは確か、大晦日だけがお休みだったと記憶しています)。しかし、こういった(時間の制約が小さい)行事は、あると生活に句読点がつく感じがして、悪い気はしません。ここ数年の変化としては、この時期に手帳を買い替えるようになったことです(手帳をつけるようになりました)。
ご多分に漏れず、私も過去、何冊もの手帳を購入し、使わずじまいでしまい込むという経験をしてきました。しかし、ここ数年は毎日欠かさず手帳をつけています。用事は多くありませんが、その代わりに何に使っているかと言うと、バイオリズムや○○をこなしたか(○○には例えば簿記の勉強などが入ります)、という記録をしています。
特に「○○をしたか」という記録が私には重要です。例えば、何か試験があったとします。私は、試験前の時期になるととてもネガティブになります。そんな時、手帳を見返して「ほらほら、チェックがついているじゃないか。ちゃんとこなしてきた証拠、、」等々と自分を励まします(試験中におなかが痛くなるのは、これでは解決しないので、朝ご飯を抜きます)。
手帳は、過去の自分を客観的に見る、1つの素材になります。周りの人と一緒に盛り上がっていくのは、とても大事ですし、心強いことです。しかし、時に自分は伸びていないのではないか、足が止まってしまっているのではないか、と不安になることもあります。私は、比較対象を自分の外に(揺れ動いている何か)にもとめてしまったことで目測を誤ってしまうのではないかと考えました。そんな時には、(ご都合主義かもしれませんが)固定化している何かにその比較対象を求めるのがいいと考えました。そのための素材の1つが、私に取っては手帳です。そんな理由もあって、周りの人には手帳を使うことをすすめています。「来年も使わずじまいかな」と考えている方には、ぜひ今年もチャレンジし手頂きたく存じます。
書影の本『やればできる』の著者である、勝間氏も手帳を商品化されています(本書でも触れられています)。手帳を選ぶ時のポイントとしては、こだわらないことです。なぜか。私は、こだわった末にある手帳(UNITED BEES)を見つけ、ここ数年愛用してきました。しかし、今年から、あっけなく中身のデザインが変わってしまいました。というわけで、今困っています(苦笑)。おおざっぱに選んだ方が効率が良さそうです。
『やればできる』はとても丁寧に書かれていました。本書が人気なのは、手取り足取り世話をやいてくれているようなそんな優しさを感じるからでしょう。全体として盛り上がっていく、そういった上昇感を持った環境の必要性は私も感じています。

頭がよくなる魔法の速習法 園善博

頭がよくなる魔法の速習法

一度読んだ本の内容が完全にスキャンできて、いつでも引っ張り出せる、私はこんな夢想をすることがあります(実際にできる方もいらっしゃるようです)。幾分覚えた気にはなっていますが、実際には達成できていません(だから夢想するのです)。完全にとはいかなくても、もう少し情報のストック量を増やす方法はないだろうか、と考えました。エヴィングハウスの忘却曲線に合わせて再読するというのは、その1つの方法です。しかし、世界には読んでみたい本がたくさんあるのが事実で、その誘惑に抗して、1度読んだ本を再読するのはエネルギーのいる行為です(もちろん、自然と再読したいと思える本に出会えた、という幸せな経験もしています)。

本書にも、再読をすすめる箇所がありました。やはり再読は、記憶への定着に効果的なのでしょう。しかし、本棚にしまってしまうと、またいつの間にか再読を怠ることになりそうです。そこで今日から、読んだ本を本棚に入れずに積んでおく、1ヶ月後にひっくり返して再読する、再読した本を本棚に入れる、というセットを組み込むことにしました。

1ヶ月あれば、十分に世界も私も変わります。違った意識で読めば、1度読んだ本の持つ(持っていた)新しい魅力にも気付けそうです。私の部屋にある本は、私が好きで買った本ばかりなので、(私にとって)面白い本ばかりです。だから背表紙を見ているだけでもニコニコできます。再読はきっと楽しい行為になると思います。しかしながら、平積みになった本を見て、また今日も買ってしまうのです。成毛氏の『大人げない大人になれ!』という本に「買書家」(本を買うのが好き)という単語が出てきました。ああ、私はこれなのだ、と自覚しました。

『頭がよくなる魔法の速習法』には、ほとんど本を読まない、という方へのアドバイスが詰まっていました。

のだめカンタービレ 二ノ宮 知子

最終巻です。満足です。いつまでも続いて欲しいとは思いますけどね。たしか、1巻を読んだのはローソンでした。そうですか、あれから8年ですか、、、
この方のマンガは好きなので、またなにか書いて欲しいなぁと思っております。(単行本のオペラ篇が出版予定です)

リクルート事件・江副浩正の真実 江副浩正

本書は、リクルートの前進である株式会社大学広告を設立し、リクルートの会長であった江副氏が、政治献金に関連して逮捕された「リクルート事件」について綴ったもの。佐藤優氏の『国家の罠』に構成は近い。しかし、いくらか余裕のあった佐藤氏(それでも次第に精神的に追いつめられていったが)とは違い江副氏は、取り調べ前から不安定な精神状態に陥っていく。それに加え、検察の取り調べは暴力的なものだった(肉体同士の衝突が無いというだけで"暴力"ではないという言い訳ができるような取り調べ)。

本書には、当時の担当検事とのやり取りも含められていた。その中で気になったのは2点。1つは検察がマスコミを意識していること。「マスコミを待たせるわけにはいかない」(p.106)といった言動は、マスコミ=世間と捉え、事件をショーアップしようという意図が感じられた。2つめはストーリーの存在。検察陣営の頭には「全貌を明らかにする」前に(勿論全くの創作ではないけれど)ストーリー(到着点)が描かれていると感じられた。そこに合わせて登場人物 (被疑者)をどう絡めていくか、といった微調整が取り調べや調書の重要用件であり、「リクルート事件」ではそれが強引に行なわれたようだ(当事者が書いたという本書の性格も影響しているだろうけれど)。

私は「リクルート事件」という事件自体、名称を数回聞いた経験があるに過ぎなかったけれど、本書を読んだことで当時の政界の環境を含め、ぼんやりではあるけれどイメージを掴めたという気はしている。しかし、佐藤氏もそうだが江副氏も、徹底的に攻撃するのではなく、どこか割り切っており合いをつけている。人を憎まずというのだろうか、それが著者の強さなのか、人間が生来持つものなのか、は分からないけれど、あんなにひどい目にあわされたのにすごいなと。

Eat That Frog! B.Tracy

Eat That Frog!: 21 Great Ways to Stop Procrastinating And Get More Done in Less Time
Brian Tracy
Berrett-Koehler Pub
売り上げランキング: 19295

著者のブライアン・トレーシーは、『Focal Piont』など多数の啓発書を著わしている。本書では、21のメッソドが紹介されているが、全体で130ページ程と、コンパクトに納められているおり、ひじょうに読みやすい。
本書に納められていた中で、最近注意していることは2つ。1つは「See your self as a role model for others.」(p.77) あたかも、自身が誰かのロールモデルであるかのように振る舞うことで、自身を高めていくという試み。誰かのゲームのルールに合わせるのではなく、自身でハードルを上げて少しでも先に行けるように試みる。最初は "as if"でしていたことが、いつしかあたりまえに、ごくごく自然なこととして行なえる(ようになればいいな)。
2つ目は「One of the most helpful of all time management techniques is for you to get better at your key tasks.」(p.64) 本書の例でいえば、パソコンでタイピングをする仕事が多い人は、タッチタイピングを身に付けることで生産性を向上させることができる。特に、抵抗のあるタスク "frog"の習熟度を上げると効果は大(Eat That Frog!)。何度も繰り返して、スムーズに滑らかにこなせるようにする。なんだ、楽器の練習と同じじゃないか、という所に(私の中では)行き着きました。

続きを読む